研究課題/領域番号 |
17K13952
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研究機関 | 神戸山手大学 |
研究代表者 |
楠本 和歌子 神戸山手大学, 現代社会学部, 講師 (70794527)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 心理支援 / 僻地 / モデル構築 |
研究実績の概要 |
本研究は,僻地の中でも沖縄県の離島を取り上げ,現場のニーズに即した包括的心理支援モデルの構築を第一の目的とする。さらに,モデルに基づいた具体的な実践方法を考案し,『包括的心理支援の手引き』として各現場に還元することを第二の目的とする。これは,臨床心理学分野において検討されてこなかった僻地という地域性に注目し,在住者の心のケアの充実に直結する学術的・臨床的意義の高い先駆的研究である。初年度である平成29年度は,離島の中でも石垣島を研究対象地域とし,以下の4点に取り組んだ。 1.地域特性の整理:沖縄県,石垣島に関する歴史,地理的・気候的特性,文化的背景,生活様式,貧困問題や教育の質といった生活実態に関する文献整理を行った。これらは,インタビューデータ分析や実践方法検討の際にメタ枠組みとして重要なものである。 2.地域性の観点にもとづく分析方法の検討:心理支援の地域性の問題に関わる国内文献を収集すると共に,僻地における理想的な心理支援の在り方を検討するための分析方法の確認を行った(研究発表1)。 3.学校・教育領域におけるインタビュー調査の分析:スクールカウンセラーと学校教諭の協働的な心理支援の在り方についてモデル構築することを目的として,スクールカウンセラーが配置されている石垣市内の小・中学校に勤務する教育相談担当教諭および養護教諭のうち,調査協力への同意が得られた10名に対して実施したインタビューデータのM-GTA(木下,2003)による分析を行った(研究発表2)。 4.学校・教育領域における効果的な実践方法検討の準備:3.により生成された仮説モデルを学校教諭数名にフィードバックし,当事者たちと対話協働を進めていく準備を行った。学校教諭からは,在住者が抱える現実的な多くの課題について示唆を受け,本研究の目的をさらに明確化することにも役立った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は,仮説検討型ではなく仮説生成型研究に位置するため,石垣島の心理支援の実態把握及び分析方法の検討に当初の予定よりも時間を要したことが理由の一つである。また,研究協力者や関係者と対話協働を行いながらモデル生成を行うという研究の性質上,当初想定していなかった新たな課題が研究途上で浮かび上がり,分析枠組みを変更する必要が生じたことがもう一つの理由である。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は,学校・教育領域における心理支援モデル生成と,実践方法の検討をさらに進めると共に,保健・福祉領域,医療領域へのインタビュー調査を実施し,データ分析を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該助成金が生じた理由は,保健・福祉領域,医療領域へのインタビュー調査を翌年度に延期したことで謝金を使用する機会がなかったため,また,インタビューデータの文字起こし作業を外部業者に依頼したことで人件費が発生しなかったためである。 平成30年度は,調査及び打ち合わせ,情報交換を目的として沖縄本島や石垣島への頻回出張を予定しているため,その際の旅費に使用する。他にも,インタビュー調査協力者への謝金,研究に関する図書の購入,心理支援実践の一環としてHP作成等を計画している。
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