研究課題/領域番号 |
17K13954
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
山口 慶子 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 認知行動療法センター, 研究員 (50793569)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 臨床心理学 / 心理療法 / 治療プロセス / 不安症 / 曝露法 / 不安障害 / 治療効果 |
研究実績の概要 |
本研究は、不安症に対する有効な介入とされる曝露法の治療プロセスを検討することを目的とする。具体的には、曝露法の介入を行っている面接場面を質的・量的に検討し、治療予後との関連から治療効果に関わる要因を検討する。 平成29年度は、曝露法の治療プロセスを検討するための土台を整備した。まず、不安症の治療に携わっている臨床家へ聞き取りを行い、実際の曝露場面で生じやすい出来事や問題について理解を深めた。それを踏まえ、治療プロセス全体を見渡し、曝露介入以外の関連要素もリストアップした。また、研究手法について、面接の一次データを用いる質的なアプローチと、それを量的な分析によって検証・統合することを含む混合研究法を採用することを検討した。8月には、国際混合研究法学会アジア地域会議/日本混合研究法学会において、混合研究法を推進している国内外の研究者が主催するワークショップに参加した。そのうえで、曝露法に関する研究動向を整理するために、系統的レビューを進めた。当初の計画では、レビューに続き、曝露場面の面接データを解析し、仮説モデルを生成する予定であった。しかし、上記の作業を進める過程で、考慮すべきさまざまな点(対象疾患、曝露介入時の問題や工夫、治療効果に関わる要因、研究手法など)を精査し、これまでの知見を網羅的に整理する必要が生じ、現在は系統的レビューを行っている段階である。 これらに加え、本年度は治療メカニズムについても検討した。当初、面接の一次データを用いて検討する計画であったが、健常群を対象とした既存の質問紙調査データを使用した二次解析が可能となった。そこで、臨床群による検証に先立ち、健常群による検討を行った。二次解析では、不安症やうつなどの感情障害と感情調整不全の関連、とくにポジティブ感情との関連に注目し、ポジティブ感情を用いた感情調整方略が健常群のうつ症状を縦断的に予測する示唆を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記のように、当初は先行研究を整理し、対象事例の面接データを解析することにより、不安症に対する曝露法の治療プロセスに関する仮説モデルを生成し、そのモデルの検証を進める計画であった。しかし、研究手法の再検討や過去の文献やデータの整理に、予定していたより大幅に時間を費やした。治療メカニズムに関する既存の調査研究データの二次解析は、健常群の検討を進め、その成果をまとめた論文はPsychology and Psychotherapy: Theory, Research and Practice誌に採択された(Yamaguchi, Ito, Takebayashi, 2018)。
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今後の研究の推進方策 |
系統的レビューを継続し、臨床群を対象とした既存の調査データの二次解析を進める。当初の予定では、面接の一次データに基づく仮説モデルを生成・検証することにより、曝露法の治療プロセスを検討する予定であった。しかし、研究手法を再検討するとともに、過去の文献や調査データを詳細に調べる必要が生じた。それに伴い、当初の計画を見直し、今後は主に系統的レビューおよび調査データの解析という異なる視点を組み合わせ、仮説モデルの生成を進める。そのうえで、面接の一次データを用いて仮説モデルの検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、本年度中に面接データの解析を開始する予定であった。しかし、理論、臨床、研究に関する文献の詳細な検討、過去の調査研究データの二次解析およびその論文執筆などに取り組んだために、遅れが生じた。そのため、面接データの解析に必要な諸経費(主に人件費・謝金)の支出が予定より少なかった。 平成30年度以降は、資料整理や解析に係る研究補助の人件費・謝金として支出を予定している。また、投稿論文の英文校正費や成果発表の旅費等に使用する計画である。
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