研究課題/領域番号 |
17K13954
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
山口 慶子 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 認知行動療法センター, リサーチフェロー (50793569)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 臨床心理学 / 心理療法 / 不安症 / 曝露法 / 最適化 / 気分障害 / 治療プロセス / 治療効果 |
研究実績の概要 |
本研究は、不安症に対する有効な介入とされる曝露法の治療プロセスを検討することを目標とした。具体的には、曝露法の介入を行っている面接場面を質的・量的に検討し、治療予後との関連から治療効果に関わる要因を検討することであった。 令和2年度は、次の2点を重点的に進めた。第一に、曝露法の研究の趨勢を把握するため、論文要旨のテキストデータの解析を引き続き進めた。とくに解析計画の修正や結果のまとめ方について検討を行い、潜在ディリクレ分配モデルを用いた特定の潜在トピック下での単語の生起確率の推定するための統計的なアプローチであるトピックモデルから、新たにStructural Topic Modelを用いる方針を検討し、暫定的な解析を進めた。第二に、曝露法の治療機序を感情調整の観点から解明するため、既存の調査研究データの二次解析を進めた。臨床群のデータを用いて、うつと不安における感情スタイル方略の違いを検討した解析結果を論文投稿した。上記2点に加え、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大状況下において、メンタルヘルスの維持・改善にポジティブ感情がどのように役立つかまとめた論文が、Psychological Trauma誌に採択された(Yamaguchi et al., 2020)。これまで研究を進めてきた、感情への曝露による感情反応の変化の作用の一部を説明すると考えられる”Positive Emotion in Distress”(Yamaguchi et al., 2018)の概念が、COVID-19下でどのように活用できるか検討した上で、本論文では他のポジティブ心理学的アプローチとともに、ポジティブ心理学的な観点から予防的なメンタルヘルスケア戦略の可能性について具体的に論じた。また、日本ポジティブサイコロジー医学会および日本社会精神医学会の年次大会においても発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度は、トピックモデルを用いて解析した成果を論文投稿する予定であったが、最新のStructural Topic Model (STM)を用いる方向へ解析計画を修正する意義および必要性が明らかとなった。既存の調査研究データの二次解析については、結果をまとめた論文を投稿し、おおむね順調に進んでいる。さらに、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大状況下においてメンタルヘルスの維持・改善にポジティブ感情がどのように役立つかまとめた意見論文は、Psychological Trauma誌に公表された。
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今後の研究の推進方策 |
Structural Topic Model (STM)による解析を完了し、その結果を学術雑誌に公表することを目指す。それにより、不安症に対する曝露法の介入について、どのようなトピックから検討する必要があるか判断する情報を得る。また、既存の調査データの二次解析に関する成果についても学術雑誌に公表することを目指す。以上から、不安症に対する介入の最適化の工夫について検討するための今後の研究課題の方針を導き出す。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に研究計画を見直し、令和2年度も、論文要旨テキストデータの解析結果に基づく成果のまとめ方の検討や、既存の調査研究データの二次解析の論文投稿を重点的に進めてきたため、当初予定していた面接データの解析に必要な諸経費(主に人件費・謝金)の支出がなかった。加えて、成果発表を予定していた学術集会の年次大会が新型コロナウイルス感染拡大防止のためWeb開催となったため、成果発表に係る旅費や資料印刷費の支出がなかった。来年度は、論文公表のための英文校正費や、データ解析に係る研究補助の人件費、成果発表に係る旅費や資料印刷費として支出を予定している。
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