研究実績の概要 |
本研究は、不安症に対する有効な介入とされる曝露法の治療プロセスを検討することを目標とした。具体的には、曝露法の介入を行っている面接場面を質的・量的に検討し、治療予後との関連から治療効果に関わる要因を検討することであった。 令和3年度は前年度に続き、次の2点を重点的に進めた。第一に、曝露法の研究の趨勢を把握するため、論文要旨のテキストデータの解析を引き続き進めた。具体的には、前年度までに検討を進めた解析計画の修正や結果のまとめ方の方針を踏まえ、データを追加した上で、最終的に976の論文要旨を解析対象としてStructural Topic Modelingを用いた解析を行った。トピックの趨勢、各トピックに含まれるキーワードやトピック出現率の推移を明らかにした研究成果は、第14回日本不安症学会学術大会にて研究発表することが確定した。 第二に、曝露法の治療機序を感情調整の観点から解明するため、前年度に続き、既存の調査研究の二次解析を行った。個々人がどの感情調整をどのように使うかという、その傾向を概念化したものを情動スタイルといい、二次解析では、うつと不安における情動スタイル方略の違いに着目し、解析を実施した。これらの研究成果は、Clinical Psychology & Psychotherapy誌に採択された(Yamaguchi et al., 2022)。 また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大状況下において、メンタルヘルスの維持・改善にポジティブ感情がどのように活用できるか、前年度に続き検討を進めた。その成果として、with & afterコロナ社会におけるメンタルヘルスケアへの示唆とその課題についてまとめ、日本社会精神医学会雑誌へ寄稿した(山口,印刷中)。
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