研究課題/領域番号 |
17K13961
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
椙田 麻菜美 筑波大学, 人間系, 特任助教 (70776765)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 時間的順序記憶 / 海馬 / 内側前頭前野 / グルタミン酸受容体 / ラット |
研究実績の概要 |
過去に経験した出来事の順序についての記憶を時間的順序記憶という。本研究の目的は、ラットの時間的順序記憶において海馬-内側前頭前野(mPFC)のグルタミン酸受容体が果たす役割を、行動薬理学的手法を用いて明らかにすることである。 H29年度は、mPFCのグルタミン酸受容体(NMDA受容体及びAMPA受容体)の役割を検討する実験を行った。ラットを放射状迷路の5本のアームに順に進入させ(見本期)、その1分後に見本期に提示されていたアームのうち2本を同時に開き、より古いアームへ再進入することを正選択とする(テスト期)、時間的順序記憶課題を用いた。テスト期に見本期の2番目と4番目のアーム(B vs. D)を提示する課題をラットに訓練したが、課題獲得は困難であった。そこで、テスト期に見本期の最初と最後のアーム(A vs. E)を提示する課題を訓練し、課題獲得後にB vs. Dの課題を訓練した。現在、この訓練条件で課題を獲得できた被験体から、両側mPFCへのカニューレ埋め込み手術を行い、見本期10分前のmPFCへのNMDA受容体拮抗薬(AP5)及びAMPA受容体拮抗薬(NBQX)投与が課題成績に及ぼす影響を検討している。 放射状迷路を用いた時間的順序記憶課題には、時間的順序記憶以外の要素(空間記憶)も含まれる。そのため、海馬、mPFCのグルタミン酸受容体遮断が、課題の時間的順序記憶以外の要素に影響を及ぼすのか調べる必要がある。H29年度は、海馬NMDA受容体及びAMPA受容体遮断の影響について検討した。時間的順序記憶課題と同様の見本期の後、テスト期に見本期の2番目または4番目のアーム(既知アーム)と、まだ進入したことのない新奇アーム1本を同時に開き、新奇アームへ進入することを正選択とする課題を用いた。見本期10分前の海馬内AP5及びNBQX投与により、この課題の成績が低下することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ラットに時間的順序記憶課題を訓練したが、課題獲得が困難であることが分かったため、訓練条件を変えて実験をやり直す必要が生じた。また、mPFCへのカニューレ埋め込みの座標を決定するのに時間を要した。そのため、mPFCへの薬物投与実験は予定よりも遅れている。しかし、これらの問題は現時点で解決しており、今後はスムーズに実験を進めることができると考えている。また、当初予定していたNMDA受容体に加え、AMPA受容体の役割についても検討することとしたが、薬物投与は被験体内計画で行うため、この点については特に時間を要することなくスムーズに進めることができている。 時間的順序記憶課題では、装置として放射状迷路を用いるため、課題に含まれる時間的順序記憶以外の要素に受容体拮抗薬の脳内局所投与が与える影響について検討する実験も行うこととした。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、mPFCへのグルタミン酸受容体拮抗薬投与が時間的順序記憶に与える影響を検討する実験を進めると共に 、mPFC への薬物投与が課題の時間的順序記憶以外の要素に与える影響についても検討する。 また、今年度の実験結果から、海馬のグルタミン酸受容体遮断は、課題の順序記憶以外の要素に影響することが示唆されたため、H30年度に予定している海馬-mPFC間のグルタミン酸受容体による神経伝達が時間的順序記憶において果たす役割についての検討は、使用する課題を含め、方法を検討しながら行う予定である。
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