研究課題/領域番号 |
17K13964
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
西村 方孝 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (80613398)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 音の質感 |
研究実績の概要 |
本年度は、ヒトの音声等の自然な広帯域音声内で見られるミリ秒程度の帯域間時間差が、ヒトにおいて知覚的な変化を生み出すか否かの検討を行った。この検討のために、まず、不要な雑音が発生しないファンレスのタブレット端末を用意し、最高で20 kHzの高さの音まで忠実に音をプレイバック可能なソフトウェアを作成した。その作成した装置を用いて、研究計画の通り、テスト音としては8 kHz±0.25オクターブと500 Hz±0.25オクターブの音を組み合わせた音で、帯域間時間差を与えないもの(参照音)、帯域間時間差を与えたもの(時間差音)をランダムにテスト音として被験者に提示した。被験者は、テスト音(参照音も含む)が参照音と等しいか否かを画面操作により答えた。9名の被験者の結果から相互情報量を計算したところ、4ミリ秒の帯域間時間差に対して0.052ビットながらもランダムな応答と比べて有意に大きい情報量となっていた。期待通り、時間差が大きくなるにつれて相互情報量は大きくなり、64ミリ秒の帯域間時間差に対しては、0.65ビットの情報量となっていた。 この実験及び解析結果から、ヒトの聴覚は4ミリ秒以上の帯域間時間差に対して有意な感度があり、ミリ秒程度の帯域間時間差はヒトにおいて知覚的な変化を引き起こすことが明らかになった。我々の音声(例えば[su]の音)では、10ミリ秒以上の帯域間時間差が見られるが、その時間差の大小が感覚の違い(わずかに感じる~よく感じる)を生む可能性が強く示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度に計画されていた心理実験及び解析が完了し、動物実験で示唆されていた、帯域間時間差に対する聴覚的感度がヒトにおいても見られた。
|
今後の研究の推進方策 |
研究計画通り、人工的な聴覚刺激を用いて帯域間時間差の知覚への影響をモルモットを用いて検討する。知覚の評価に用いるオペラント条件付けは自由行動下の動物で行うため、刺激用電極の固定が懸案となっているが、今のところ、1ヶ月程度であれば電極保護具の固定が可能であると確認できているため、保護具とスリップリングを活用し、自由行動下の動物に対して電気刺激を行えるようになると見込んでいる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた防音室の購入を行うと研究費が不足するため、別の予算で防音室を購入した。その結果、設備備品費が大きく抑制されたため、平成30年度以降に必要となる動物実験関連装置の作成等のための物品費(消耗品費)として使用した。平成30年度以降は、慢性実験のための各種装置に大きな費用がかかると見込まれるため、平成30年度分と合わせて助成金を使用する計画である。
|