研究課題
若手研究(B)
本研究では、ラットの統合失調症様行動異常の形成におけるグルタミン酸N-methyl-D-aspartate (NMDA) 受容体の関与が脳発達の時期に依存したものであることを明らかにした。特に、統合失調症にみられる認知機能障害に類似した作業記憶の障害は、生後第2週のNMDA受容体の機能低下に起因することが判明した。また、この時期の神経発達にはNR2Aサブユニットを含有するNMDA受容体が必須であり、この受容体の機能低下が後の統合失調症様行動異常の原因になりうることが示唆された。
実験心理学
統合失調症の背景にある神経発達障害の発生機序の一端を明らかにできたことにより、同疾患の発症メカニズムの解明に貢献することができた。また本研究の成果は、生後の精神機能の発達を支える神経メカニズムの理解につながる。統合失調症に限らず、認知機能や情動、社会性の障害を抱える広範な発達障害に共通する神経基盤や病態生理の解明と有効な治療法開発の糸口になることが期待される。