本研究では、視覚情報に基づく不快感(視覚的不快感)をもたらす刺激要因を特定し、その生成機序を明らかにすることを目的とした。輝度変調フリッカ刺激の時間周波数成分を操作し、刺激に対する不快感を測定した。その結果、時間次元における不快感は振幅スペクトルだけでなく位相スペクトルに依存することがわかった。また、初期視覚野における神経伝達物質濃度と不快感との関連は見られなかったものの、不快感が高い刺激に対して脳賦活量が増加する傾向が見られた。以上の実験結果から、不快感の生成には、視覚の初期過程における過剰な神経応答だけでなく、位相構造の抽出に関わるより高次の過程が関与することが示唆された。
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