研究課題/領域番号 |
17K13968
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
真田 原行 関西学院大学, 文学研究科, 博士研究員 (40734041)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 作業記憶 / 事象関連電位 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、本研究の目的である「物体作業記憶の検索プロセス解明」に関連して、視覚情報(色)を記憶する作業記憶課題を遂行中の脳波を測定し、事象関連電位を分析した。本実験で用いた作業記憶課題は、continuous report taskと呼ばれ、比較的近年に開発された課題であり、作業記憶内表象の精度を計測できる点でそれ以前に用いられてきた作業記憶課題(主に遅延見本合わせ課題)に比べて優れている。ただし、このcontinuous report task遂行中の事象関連電位についてはこれまで学術誌上での報告がない。遅延見本合わせ課題等を用いてその遂行中の事象関連電位を分析した報告は多数あり、そうした研究から作業記憶の記銘・保持・検索に対応した事象関連電位成分を区分けできることが知られているが、continuous report task遂行中の脳波からも同様にこれらの事象関連電位成分が観察できるかは未知数であった。本実験の結果、continuous report task遂行時にも遅延見本合わせ課題同様、作業記憶の各認知プロセスに対応する事象関連電位成分を観察できることが明らかになった。これにより、これまで作業記憶表象の精度はcontinuous report taskの行動成績のみを指標として定義されてきたが、今後は事象関連電位を用いることにより、その精度が認知プロセスのどの段階で決定されているのかなどをより詳細に検討することが可能となる。この実験の一部を、2018年10月に開催されるSociety for Psychophysiologyの年次大会にてポスター発表することが決定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度は、continuous report taskを用いてその課題遂行中の脳波を測定、事象関連電位を分析し、その各認知プロセス(記銘・保持・検索)に対応する事象関連電位成分が観察できることを明らかにした。この成果により、作業記憶内表象の質がどの過程で決定されるのかより詳細に分析することが可能となり、今後物体作業記憶の検索プロセス解明を行っていくうえでも重要な知見を得たと言える。 また、現在は物体作業記憶の検索時の視線を計測する実験を実施中であり、実験が終了し次第、その分析を行う予定である。またその結果については、順次学術大会や論文等にて発表を行う予定である。 しかしながら、研究実施計画において平成29年度に本来実施を予定していた物体作業記憶課題遂行中の眼球停留関連電位計測については実施ができなかった。それゆえに、予定していた実施計画に比較し進捗はやや遅れていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、まず平成29年度に予定していた、物体作業記憶課題遂行中の眼球停留関連電位を測定する実験を行う。眼球停留関連電位の測定には、独立したデジタル測定機器(眼球運動測定装置・脳波計)を同期する必要があり、その点において工夫・時間が必要であると予想される。眼球運動の測定には、光学的な眼球運動測定装置に加えて、脳波計によって同時に眼電図も測定するなどの工夫を予定している。 また、上記の実験を順調に実施できることが分かり次第、並行して特徴情報(色など)を記憶する作業記憶課題時の眼球停留関連電位の測定実験も行う。眼球停留関連電位の測定に眼電図を用いる場合、サッケードがいつ生じたのかを手作業でコーディングする必要があるが、その実施のために実験協力者を雇用することも計画している。これらの実験・分析が終了した後、その成果を学術大会や学術誌において発表することも予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に実施した実験は謝金を必要としない形で実施でき、また眼球停留関連電位の測定実験が未実施であるために、予定よりも人件費支出が少額となった。平成30年度には、この金額を眼球停留関連電位の測定実験に充てる予定である。また分析等において実験協力者が必要となった場合、その経費にも充てる予定である。
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