研究課題/領域番号 |
17K13968
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
真田 原行 関西学院大学, 文学部, 特別研究員 (40734041)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ワーキングメモリ / 空間情報 / 注意 / EEG |
研究実績の概要 |
令和2年度は、物体作業記憶の検索プロセスにおける空間情報の重要性について検討する目的で、脳波測定実験を行った。先行研究(Kuo et al., 2009)の事象関連脳電位(ERP)測定実験により、特徴情報(色や図形)の作業記憶検索プロセスにおいて、想起すべき刺激が呈示されていた場所に対し空間的注意が向くことが示されている。理論的には、色や図形などの特徴情報が統合された物体の表象を保持・検索するとき、色など単一の特徴の作業記憶の場合と比べて、空間的注意がより重要な役割をもつ(Wheeler & Treisman, 2002)。そこで本実験は、物体(色と図形の組み合わせ)の作業記憶における検索プロセスにおいて、色のみを記憶する作業記憶の検索プロセスよりも、より強く空間的注意が働くのかについて検討した。本実験は30名を対象として実施し、必要な脳波データの測定は終了している。分析では、Kuo et al. (2009)が指標としたERPと同じ神経活動を反映すると考えられる、シータ帯域の脳波活動の左右半球差に焦点を絞り、時間周波数分析を実施する予定である。もし上記の理論が主張するとおり、物体作業記憶の検索プロセスにおいて空間的注意が重要な役割をもつならば、物体作業記憶において、色作業記憶の場合よりも、シータ帯域活動の左右半球差が大きくなると予測される。本研究の成果は、本研究の目的である「物体作業記憶の検索における空間情報と注意の役割の検討」に対して、意義ある知見を提出できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度に計画していた眼球停留関連脳電位(EFRP)測定実験については、令和2年度中にその方法の有用性を検証する目的でいくつかの予備実験を行ったが、残念ながら本研究計画推進に対してEFRPを利用することは必ずしも有用といえないという結論に達したため、本実験の実施は見送った。 また、新型コロナウイルス感染症流行によって研究環境に制限がかかる中で、平成31年度から採用されている特別研究員奨励費の研究を優先させたこともあり、本研究計画の実施に対して十分な時間を割くことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画は令和2年度をもって終了予定であったが、新型コロナウイルス感染症流行を受け、事業年度を1件間再延長した。令和3年度は、まず、令和2年度に実施した脳波測定実験のデータについて、主に時間周波数分析を用いた分析を行う。その後、その成果を国内・国際学会や論文等で発表する予定である。また、令和3年度は、研究者本人が何度も指標として用いているため技術的にも信頼性の高い事象関連脳電位(ERP)を用いた脳波測定実験を行う予定である。新型コロナウイルス感染症流行により限られた研究環境の中でより効率的に実験を実施するため、実験実施協力者の雇用などの工夫も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症流行によって研究環境に制限がかかり、特に春から夏にかけては緊急事態宣言による大学閉鎖もあって実験を全く実施することができなかった。また、この研究環境の制限の中で、令和2年度は、別途採用されている特別研究員奨励費の研究を優先させたこともあり、本研究計画の実施に対して十分な時間を割くことができなかった。さらに、同感染症流行により国内・国際学会が全てオンラインでの実施となり、想定していた旅費を全く使用しなかった。これらの理由から、令和2年度使用予定額よりも大幅に下回る金額の使用となった。 令和3年度は、令和2年度に実施した実験のデータ分析が完了し次第、成果報告に向けて論文化するが、その校閲費・投稿費などとして使用する予定である。また、事象関連脳電位(ERP)測定実験を実施することを予定しているが、その実験謝金や、実験実施協力者に支払うアルバイト謝金などとして使用する予定である。
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