研究課題/領域番号 |
17K13971
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研究機関 | 株式会社国際電気通信基礎技術研究所 |
研究代表者 |
浅井 智久 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 脳情報通信総合研究所, 研究員 (50712014)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 運動 / 身体 / 主体感 / 共鳴 / メタ認知 |
研究実績の概要 |
背景:近年,「自己意識の科学」が積極的に進められている。ここでは,私たちが「自己」という表象を獲得するためには,まず自己身体が存在し,それが自己運動を可能にすることが重要であると考えられる。また,身体ある他者とのインタラクションの影響についても検討する必要がある。しかしながら,どのように統合された自己表象が運動表象へアクセス可能なのか,また,どのように他者の運動が影響してしまうのかは不明であった。 研究1:「自己運動の精度へのメタ認知」自己運動のモニタリング時には,その予測誤差の精度を何らかの形で計算可能であるはずである。そこで,自己運動の検出課題をペンタブレット上で行い,その検出までの反応潜時と検出精度の関連を検討した。その結果,有意な正の相関関係が確認され,予測誤差へのメタアクセスの証拠と解釈された。また精神病理学的な個人差が同様に確認された。 研究2:「自己と他者の運動共鳴」他者の運動の観察に,自己運動が引き込まれることを検討するために,ペンタブレットを対面で2台設置し,2名の参加者が同時に運動課題を行う実験を行った。このとき,相手の運動(カーソル)が自分の画面上に呈示された場合に,強くその他者運動の影響を受け,お互いに同期した運動位相に近づくことが分かった。 重要性:これらの研究によって自己の身体・運動表象のメカニズムが解明されれば,私たちがどのように自己と他者を区別し,また同時に自己と他者をつないで認識しているのか,私たちの社会的機能の基盤および精神病理学的な個人差についての理解が深まると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題が計画通りに進んでいることに加え,関連する以前から継続中であった研究が英文論文として発表されたため(Asai, T., 2017. Know thy agency in predictive coding: Meta-monitoring over forward modeling. Consciousness and Cognition, 51, 82-99.)。
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今後の研究の推進方策 |
今後も計画通りの行動実験の実施を進める。加えて,共同研究として,脳刺激法による行動変容実験を検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に被験者謝金への支出を予定していたが,ボランティアでの協力となり,支出せずとも実施計画がスムーズに終わった。そのため,次年度に新たな実験計画を追加する(脳刺激法による行動変容実験)ことにしたため,その実験へ予算を繰り越すことにした。新たな実験計画は,研究協力を得るために高知工科大で行うため,そのための旅費や実験装置の購入に使用する。
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