研究課題/領域番号 |
17K13973
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
稲井 智義 北海道教育大学, 教育学部, 講師 (30755244)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 持田栄一 / 教育福祉 / 幼児教育 / 親・PTA / 子どものシビル・ミニマム論 / 児童福祉 / 子ども観 / 1970年代 |
研究実績の概要 |
2017年度に実施した研究の成果は、次の通りである。 1)資料蒐集に関しては、第一に国内の図書館で資料調査を行い、PTAに関する持田の論文や実践報告を当時の雑誌から蒐集した。第二に国内の古書店等を通じて、1970年代前後に持田やその関係研究者が発表した教育福祉と幼児教育に関する著書を蒐集した。以上の資料の読解に着手しており、次年度に研究成果として発表する。 2)研究成果に関しては、第一に、1970年代から1980年代にかけての教育学で形成された教育福祉論をアンラーニングすることを目的とした研究動向論文を執筆した。ここでは、教育福祉論として取りあげられることが稀であった持田の理論を、同時代の教育学形成や教育福祉論争に位置づけた。この論文は、研究全体を今後進めていくうえでの出発点となる。 第二に、保育原理の教科書で「保育の思想と歴史的変遷(日本)」を執筆した。1970年代の持田の理論が、近年の「幼児の主体的な活動」や「カリキュラム・マネジメント」を検討するうえで意義を持つことを指摘した。 第三に、子ども観のグローバル・ヒストリーに関する共同研究を通じて、近代日本の児童福祉と子どもの権利についての論文をまとめた。これは、日本の児童福祉を国際的文脈に留意して捉え直したものであり、英語圏の日本子ども観史研究をレヴューした点でも意義がある。 3)研究交流として、2017年8月の日本教育学会大会テーマ部会B「20世紀の子ども問題と教育福祉」を共同で企画・運営して司会を担当したことが挙げられる。また8月の石井記念友愛社主催「石井十次セミナー」で、岡山孤児院と石井十次に関する教育史・子ども史研究について講演した。そこでは社会福祉学者や、もう一人の講演者であるアメリカ合衆国の日本思想史・子ども観史研究者とも研究交流する機会を得て、今後の研究に対する助言を受けることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は一方で、持田栄一による親の教育権論とPTA会長としての活動との関連の解明を試みた。PTAに関する資料蒐集はほぼ終えているため、次年度に精緻な読解を進めて、その成果を発表していく。 他方で近現代日本の教育福祉に関する研究動向論文、教科書、共著を発表することができた。これらの成果は、1970年代の持田栄一の理論と活動の意義をより明確にするための社会史的文脈を明らかにするものであると位置づけられる。 以上の点から、関連する時代と社会状況については当初の研究計画以上に把握できたものの、持田に関する研究成果を発表することは今後の課題であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
持田のPTAに関する理論と活動に関する研究成果については、2018年度に発表することを目標にする。PTA以外の「子どものシビル・ミニマム」論と幼児教育論に関する資料は継続して蒐集を進めて、1970年代の持田の教育福祉の理論と活動の総体を把握していく。 資料蒐集に関しては、文献複写や図書貸借を利用して網羅的な蒐集を行い、国内の図書館等に直接訪問する必要が生じた場合に限って現地調査を行う。これは、何らかの事情で資料調査に行くことが困難になった場合の研究推進方策である。 全体として、研究成果を二年目・三年目に論文として発表することを優先して、研究動向の把握と資料読解を進めていく。
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