本研究は、学びの場の自己創出の視点から日本語学習者が実社会において他者との関わりを通して、如何にことばの知識と活用力を学んでいくのか、その詳細を分析し、新たな学びモデルを構築・提言することを目的としている。具体的には、実社会の学習体験を「学びの場」としてどのように捉え、また学習者自身が日常的社会体験の中で自らの学びをどのようにデザインし構築するか、という「学びの場の自己創出」の視点から、多様な実社会における日本語学習者を対象とし、社会文化的体験を意図的に自ら学びの場として再構築する過程を横断的かつ縦断的質的分析を行い、「ことば体験による学びモデル」として新たなモデル構築を行った。更に,このモデルに基づいた,日本語学習者の学習方略についていくつかの提言を行った。 最終年度である平成30年度は、エキスパート初修外国語外国人教師を対象とし、長年の教授体験を通して自らの体験を意味づけ,自己成長として捉える転機となる体験に焦点を当てた調査研究を実施した。調査では,成長の内的過程を質的に検討するため、以下の項目に焦点を当てて実施した。 (1)エキスパート外国人教員同士の授業参観による学び合いの体験 教育経験豊富な外国人教員がそれぞれの授業を参観し,授業参観後に意見交換を行うミーティングに参加し、エキスパート教員同士の学び合いの参与観察を行った。 (2)エキスパート外国人教員を対象とし、自身が成長と捉える転機となる体験に焦点を当て、ライフストーリー・インタビュー調査を行った。 上記の一連の調査研究結果は,日本教師学学会第20回大会において,「教師としての成長における転機体験の質的分析:第二外国語熟達外国人教師のインタビューから」の題目で研究発表を行った。
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