本研究「海と人との関係の編み直しとしての海洋教育の基礎理論研究」は、海と人との関係の編み直しの営みとして「海洋教育」を位置づけることで、海洋教育をめぐる混乱状況を整理し方向づけるための理論基盤を提供することを目的としている。 本年度は、2021年から2030年にかけての「国連海洋科学の10年」における海洋問題の解決を目指した取り組みのうち、特に教育分野において重要となる共通指針「Ocean Literacy」の研究を行った。Ocean Literacyはアメリカにおいて、全米科学教育スタンダードに基づき構築されたものであり、海洋科学的な視点が強い。そのため、Ocean Literacyを各国が導入するに当たっては、各国独自の文化産業面を踏まえて、ローカライズする必要がある。特に教育現場への導入にあたっては、教育課程を定めるナショナルスタンダードとどのような整理を図るかが重要となる。そのため、Ocean Literacyはグローバルな展開へと至っていないのが現状である。日本においても、ほとんど知られていないのが現状であり、施作レベルはもちろん、教育政策にも結びついていない。 他方、近年は海洋プラスチック問題や地球温暖化などの海洋にかかる問題が広く知れ渡り、教育現場でも取り上げられるようになっている。しかし、 その際、海が地球においてどのような役割を果たしているのか、海と私たちがどのように関わっていて、今後関わっていくのかという視点は希薄である。この課題に対して、Ocean Literacyはカリキュラムを構築するためのフレームとして活用可能ではある。そこで、3つの自治体にてOcean Literacyのローカライズとカリキュラム構築の実践研究を行った。
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