本年度は折り紙の教育的効果を検討するための予備的研究を行った。 細谷(2020)は,満3・4歳児の空間的能力について,スケーリング能力(ある地点における距離を別の地点において相対的に位置付ける,あるいは思考上で拡大・縮小する能力)やメンタルローテーション能力,および実行機能との関連を検討した。スケーリング能力は実行機能およびメンタルローテーション能力の双方とも相関が認められなかったが,メンタルローテーション能力は実行機能と有意な相関関係が認められ,その関係は月齢を統制しても有意であった。また,スケーリング能力に関しては,抽象度が高くシンプルな形状の2種類の長方形フィールド内よりも,木や家などのアイコン図が目印として用いられた円形フィールド内の位置探索の方が,パフォーマンスが有意に高かった。 折り紙を折ることは,抽象度の高い正方形の紙を折りたたむことから始まり,次第にそれを具体的なイメージを伴う作品に変化させていく工程である。3・4歳児においては,スケーリング課題の結果から示されたように,抽象度の高い形の中で辺の長さ等の関係性を把握しながら折ることは難しいことが予想されるが,具体的なイメージがあると操作が容易になると考えられる。より低年齢の子どもに折り紙遊びを提案する一つの案として,具体的な形をした折り紙作品から形を変化させて遊ぶ活動を検討したい。 また,視線追跡機器を用いて小学校中学年の児童が折り紙を折る様子を確認したところ,高スキル児の折り時の視線について興味深い示唆を得た。今後,さらにデータを取得して,折り紙スキルと空間的能力との関連を検討する予定である。
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