本年度はまず、折り紙遊びに対する現在の保育者の意識を検討するため、保育者対象の質問紙調査を実施した。複数園に調査協力を依頼し、研究協力の同意が得られた58名の保育者から回答を得た。保育者は、幼児期の折り紙遊びについて、さまざまな教育的魅力を感じているものの、同時に複数の子どもに折り紙指導の対応をする難しさや環境的理由から指導に困難を感じていることが明らかになった。複数人への対応を可能とするような指導方法の開発が求められる。 これまでの検討を踏まえ、さらに本年度は、5歳児クラスの幼児を対象に折り紙遊びに関する実践研究を実施した。前年度までの検討により、折り紙指導における教示方法として、一般的な折り図よりも抽象度が低く、子どもに興味を持たせられるものが必要であると考えられた。そこで、本研究では、折り紙工程を小さな折り紙模型で表した半具体物の折り図を作成し使用することとした。保護者から研究参加の同意を得られた49名の5歳児が研究に参加した。事前・事後調査として視知覚運動協応課題、空間認知課題、折り紙課題等を実施した。実践群においては、折り紙遊び実践期間中に所属園に折り紙コーナーを設置し、幼児が自由に半具体物の折り図を用いて折り紙遊びができる環境を設定した。分析の結果、幼児が挑戦する折り紙作品数には特に運動協調性が関連することが示唆された。幼児期の空間スキルと運動協調性、実行機能、折り紙スキルの関連について検討し、折り紙遊びの教育的効果について考察を行った。
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