研究実績の概要 |
本年度は,協同的な造形表現を支える素材環境についてのアクションリサーチを行う準備として,幼稚園での造形表現場面の観察調査および保育者へのインタビュー調査を行った。幼稚園の観察調査では,製作場面において 4 歳児がモノを他者に「見せる」行為が,「見せる」側の幼児にとってどのような機能をもつ行為なのかを明らかにするために,論文執筆を行った。幼稚園 4 歳児 2 クラスを対象に 1 年間の継続的観察を行い,「見せる」行為の相手と機能に着目して分析した。その結果,製作に固有の「見せる」行為の機能には,幼児が「製作結果の報告」を行う機能と「製作過程での交渉」を行う機能の 2 つがあり,「見せる」相手が保育者か他児かにより異なる傾向があることが明らかになった。次に,幼児がモノを「見せる」相手は,学年開始期は保育者,学年最終期では他児が多いことが明らかになった。さらに,幼児間での「見せる」行為の機能は,時期による相違が見られ,学年開始期には,「製作結果の報告」が多いが,学年最終期では「製作過程での交渉」の機能をもつ「見せる」行為が多くなっていた。幼児同士で一緒に過ごす時間の経過や一緒に遊んだ経験が蓄積されるにしたがって,他児は協同で製作する相手・パートナーの役割を担うようになり,「見せる」行為が質的に変化することが示唆された。 保育者へのインタビュー調査では,幼児の造形表現を支えるために保育者がどのように素材を選び,環境を構成・再構成しているかを明らかにするために,経験年数2年の保育者に学期末にインタビューを行った。これらの調査結果に基づき,平成30年度に実施する観察調査の対象について検討し,観察調査とインタビュー調査を実施する。
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