研究課題/領域番号 |
17K13984
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研究機関 | 京都教育大学 |
研究代表者 |
佐川 早季子 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (90772327)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 素材 / 造形表現 / 環境 / 遊び / 創造性 |
研究実績の概要 |
当該年度は、造形表現における素材環境についての仮説に基づき、保育所3歳児クラスでのアクションリサーチを行った。さらに、イタリアのレッジョ・エミリア市の幼児教育の哲学について購読し、素材環境についての仮説を精緻化した。 アクションリサーチでは、子どもの個性や年齢に応じた素材を設定することの重要性(槇,2004;松本ほか,2012)を踏まえ、保育者と研究者による意図的な素材環境づくりの実践を行った。具体的には、1年間で2名の子どもに焦点を当て、その子どもの表現の個性および年齢に応じた素材環境(素材の特性・種類・数・置き方)について、保育者と研究者と共に考え、実際に、子どもたちの行動にどのような変容が見られるかを、事前・当日・事後の3日間の観察を行うことにより明らかにした。イタリアのレッジョ・エミリア市の幼児教育については、「審美性」(aesthetics)という概念に注目して理論書を購読し、仮説を精緻化した。日本とレッジョ・エミリア市の表現活動では,子どもの感覚・感性に訴える環境を準備し,多様な感覚を通じてモノとかかわる経験が重視されている点に親和性がある。一方、レッジョ・エミリア市の幼児教育では、素材環境のしつらえが、複数の保育者(アトリエリスタと呼ばれる芸術士を含む)らとの対話と知の共有によりなされている。日本でも,素材の配置や提供の仕方については考慮されているが、各保育者のセンスや個人の裁量に任され、知が共有され、更新されることが少ないことが相違点として挙げられる。そこで、子どもと素材との出会いについて,研究者と担当保育者に加え、園内の複数の保育者間で話し合うことをアクションリサーチのデザインに組み入れた。保育者へのインタビュー調査・子どもの観察調査ともに、分析し、学会発表の準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アクションリサーチのために,先行研究レビューに基づいた仮説構築を行うことを優先し、前年度実施予定であった保育観察・インタビュー調査を本年度に行ったため。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に行ったアクションリサーチの結果を分析し、その成果発表を行う。観察調査を通して、協同性の萌芽期である幼児期の発達に即して、創造・表現を支える素材環境のあり方を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に成果発表を行う予定である。その学会参加費や論文投稿費に当てるため、次年度使用額が生じた。
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