研究課題/領域番号 |
17K13984
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研究機関 | 京都教育大学 |
研究代表者 |
佐川 早季子 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (90772327)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 素材 / アクションリサーチ / 環境構成 / 造形表現 |
研究実績の概要 |
当該年度は, 前年度に実施したアクションリサーチで得られたデータを分析した。 造形表現は,子ども一人ひとりの方略やスタイルの個人差,その場の状況に依存するものであり,保育者が子ども一人ひとりの「その子」の捉えから,教育的意図をもち,その状況に基づく環境構成を行うことが重要であることが先行研究で示されている。一方で,物理的環境は園ごとに異なり,理論上の原則を参照しようとしても,具体的にどのように子どもやクラスの状況に応じた環境構成を考えるかには困難が伴う。そこで,研究者と保育者が協働で,保育者が取り上げる一人の子どもの捉えに基づいて,教育的意図を環境に埋め込み,その場にいる人やモノとの相互作用で,どのようにその子の表現の過程に応じた環境構成ができるかを検討した。普遍的な原則を導き出す研究というより,一つの園での実践的課題から,子どもやクラスの状況に応じた環境構成についての仮説を構築し,その仮説を検証するアクションリサーチを行ったと言える。 焦点観察児を中心とした状況把握、焦点観察児が思いを実現できる環境構成についての仮説構築、仮説検証という段階を踏んで調査を行った。その結果, 造形表現の活動中は,1)活動外の人やものが視界に入らず,目前の活動に注意を向けられる空間にすることが望ましいこと, 2)表現のイメージを周囲のもので確かめながらつくりたい焦点観察児のような子どもにとっては, 周囲にイメージをもちやすいものを準備すること,3)素材の特性や使いやすさ,道具の出し方に配慮することの3点が,焦点観察児のような個性をもった子どもが表現し,素材とのかかわりにおいて動きの多様性,合目的性,偶然性を経験するときに必要だという結論が導き出された。また,一人ひとりの子ども理解とその理解に基づいた環境構成および再構成を行うことについて,保育者や園の意識変容にもつながったと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度は、前年度に行ったアクションリサーチの継続と保育者へのインタビュー調査・子どもの観察調査を行う予定であったが、新型コロナ感染症拡大防止のため、延期した。そのため,調査は進捗が遅れている。 一方で、前年度に保育園で行った、保育者の「その子」の捉えに基づく3歳児クラスの素材環境に関するアクションリサーチの結果をまとめ、学会での成果発表の準備を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでの研究成果をまとめ、保育者による環境構成と、そこでの子どもの造形表現のプロセスを、子ども同士の相互作用に着目して分析し、成果発表を行うことをめざす。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症のため、予定していた訪問調査ができず、次年度使用額が生じた。
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