北海道では、研究代表者が、期間を通じて「るもい健康の駅」にて「子ども実験教室」を行い、子どもたちや住民へ実践を行った。本事例では、コロナ禍においても理事長が率先して医学的な事柄にかんする市民講座を継続しておこなっており、工夫をこらして活動を継続していることを確認した。最終年度には、「るもい健康の駅」のスタッフに聞き取り調査をおこなうことにより、「るもい健康の駅」がどんな経緯をもって運営され、今後の課題やそのなかで地域住民の学びを作り出すかを聞き取った。 石川県の事例であきらかになったことは、最終年度を含む2度の訪問調査により、北海道、石川県、高知県、群馬県の観光セミナー受講生による交流会によってセミナー修了生をつなぎ、あらたなコミュニティをつくりだしていることであった。 和歌山県の事例では、和歌山大学の研究アウトリーチについては2019年以降、コロナウイルスの影響を受け、ほとんどがオンライン講義形態をとって、双方向の実践の調査が行う事ができなかった。また、大学という組織としてサイエンスカフェを行う限界が調査で判明した。それは大学広報としての性格も帯びてくるためである。そこで、申請者が主体となって地域住民対象のサイエンスカフェを企画し、地域住民を交えた実行委員会を組織のうえ、試行を2022年7月に実施した。 本研究で明らかにしたことは、地域の知の拠点として大学や研究者が地域住民に研究アウトリーチする際には、特に基礎科学に分類される科学の研究アウトリーチを、どのように地域住民とつなげ、住民の学習として作り上げて行くかを、課題として認識できた。また、大学組織としては、サイエンスカフェを含めた研究アウトリーチを実施することが、どのように大学広報と接続するかの内部的説明が必要になり、ほんらい地域住民の学習として実施されるべき研究アウトリーチ活動が変質してくることが判明した。
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