研究課題/領域番号 |
17K13986
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
金川 舞貴子 岡山大学, 教育学研究科, 准教授 (40452601)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | スクールリーダー教育 / 専門職スタンダード |
研究実績の概要 |
本研究は、教職大学院におけるスクールリーダーの育成について、専門的力量やその学習やスタンダードの在り方を整理し、アクションリサーチ型の教育プログラムを開発するための一助とすることを目的としている。本年度はまず理論研究の一環として、教職大学院のスクールリーダー教育の課題について整理した。一つは学校組織マネジメント力と教科教育力を別のものとして切り離す問題性を指摘した。その要因として、経営を機能ではなく領域として捉えること、また教育経営学において経営機能の発現の場に偏りがあることも課題であることを指摘した。次に、教諭から管理職に至るキャリア発達を支えるために、アイデンティティ形成としてのスクールリーダー教育の重要性を指摘した。 理論研究の二つ目として、スコットランドの専門職基準の特徴と考え方について整理した。1つは、従来の階層的なスタンダード構造とは異なる形態になっている理由として、機能分析的なアプローチへの批判、すなわち実践の断片化や脱文脈化に対して専門的価値に着目した行為モデルに基づくという点、さらにその背後にある「専門職実践の捉え方」の視点の特徴を指摘した。次に、専門職としての学習の在り方を示した「生涯を通じた専門職学習のスタンダード」を設けていることの意味、つまり、従来のスタンダード観と異なり、単なるコンピテンスのベンチマークとしてではなく、教職キャリアを通じて教師がいかに質の高い学びを展開できるのかを考える際に建設的な支援を提供することが強く企図されており、力量基準と学習が一体的に考えられている点を指摘した。さらに、初任期から校長までの一連の専門職スタンダードがリーダーシップの開発を中軸に据え、「リーダーシップ」と「持続可能性」という点で一貫性と連続性を備えており、わが国のスクールリーダー教育の課題を克服しうる一例であることを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理論研究については、反省的実践家を志向したスクールリーダー養成・研修プログラムを設計しているリーブスらの研究を中心に、イングランドとの比較によるスコットランドの特徴を明確化しており、おおむね予定通り進捗している。 外国調査については、昨年度予定していた調査が実施できなかったため、今年度に実施する予定である。特に、教職キャリア全体を通じた力量の一貫性と発展性をどのように捉え、その円滑なキャリア発達支援を行うためにカリキュラムにどのような工夫がなされているのか、各大学の独自性がどの程度確保されているのか、また大学・学校・教育行政の協働指導体制、学校改善と個人の力量形成の関係から指導方法や評価方法・評価規準について調査する。
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今後の研究の推進方策 |
インタビュー調査・分析、資料収集について:グラスゴー大学、ストラスクライド大学、スターリング教育研究所、ロンドン大学教育研究所を対象として取り上げ、キャリアステージを通じた一貫性や発展性がカリキュラムにどう具現化されているのか、授業形態、指導体制、評価方法・評価規準等を明らかにする。可能な限り、インタビュー調査対象者に学生を加えることで、院生の作成した実践研究の報告書等も収集・分析する。授業の参与観察、資料収集とともに、プログラムを支える理論的基盤および具体的な教育方法、各機関の連携の実態について大学担当者、学校管理職へのインタビュー調査を計画している。 理論研究:本年度指摘した教職大学院におけるスクールリーダー教育の課題を踏まえ、教科教育学と教育経営学の関係性にも焦点を当てながら、学校改善観や成果観、学校支援の在り方の違い、それによるアクションリサーチの支援の違いなどにも踏み込みつつ研究を進め、アクションリサーチ型プログラム試案の構築につなげる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該助成金が生じた大きな理由は、当初計画では本年度末に実施予定にあった海外調査が未実施であり、それに伴い、計上していた消耗品の購入、謝金の支払いができなかったためである。本年度初頭に英国への実地調査を予定しており、その調査旅費・謝金、および記録に必要な消耗品を購入予定であるため、本年度に繰り越した予算は適正に執行することが可能である。
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