2020年度、和辻哲郎と京都学派の理論がどのように教育実践に応用できるかを探求しました。この哲学には人間存在と生成について深い洞察があります。そのため、道徳教育についてはもちろん、人格(とそれに含まれるナラティヴ・アイデンティティ)の形成にも応用できます。その研究の結果を示すために、5本の論文が出版できました。一つの論文に、和辻哲郎と森昭の哲学と倫理学を比較し、そこで人間の「個人性と共同性の葛藤」を軸にしながら、道徳教育論を説明しました。また、三つの論文に、京都学派とマインドフル教育を関連させ、京都学派の「自覚」の概念がマインドフル教育の「存在モード」につなぎ、またその実際の授業の現象学的分析を行いました。最後一つの論文に、森昭の理論を使い、ナラティヴ教育学の理論と実践を議論しました。これで、2020年度の目的――和辻と京都学派の実践的応用――を成し遂げたといえましょう。
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