研究課題/領域番号 |
17K13989
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田中 友佳子 (田中友佳子) 九州大学, 人間環境学研究院, 学術協力研究員 (70707174)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 里親養育 / 里親会 / 特殊里親 / 里親会館 / 里親記念碑 / 治療的里親 |
研究実績の概要 |
平成29年度には、連合国軍占領期から1950年代末までを研究対象とし、全国里親会や県里親会、連合国軍公衆衛生福祉局(PHW)に関する資料を収集し、分析することを課題とした。各課題に対しての研究実績を以下に記す。 〔課題1〕里親の養育実態について(①里親が発行した資料の発掘と分析/②インタビュー調査) 平成29年度の最も著しい研究成果として、県里親会や全国里親会に対する資料発掘とインタビュー調査が挙げられる。公共図書館等で閲覧できる資料として京都府の史料を収集したほか、秋田県阿仁においてインタビュー調査を行った。平成29年9月の第62回全国里親大会京都大会に参加した折、里親の歴史や資料について詳しい方を全国里親会事務局より紹介していただき、その方のご助力の元で、山梨県秋山の里親記念碑の踏査、千葉県房総双葉会における里親会館の設立(現在の自立援助ホームの先駆けともいえる施設)に関する資料整理と目録作成、千葉県市川の精神薄弱児を対象とした特殊里親集落とその実践に関する資料収集などを行うことができた。また、全国里親会に所蔵されている史料も閲覧させていただく機会を得た。各地の特色ある里親実践について発掘できたこと、そして様々な方との繋がりを築けたことは大きな成果である。研究成果として、秋田県里親会連合会の発足に関する論文が『社会事業史研究』に掲載された。 〔課題2〕連合国軍占領下PHWに関する資料の発掘 課題1とは異なり、本年度の計画通りには進まなかったものの、代わりに平成30年度に計画していた「教育学、児童心理学、児童福祉学の専門家や児童精神科医による里親研究の分析」を進めることができた。慶応大学でケースワーク論等の研究を行った大久保満彦により提唱された「治療の場としての里親家庭」という新たな里親役割に関する研究を教育史学会第61回大会において発表し、投稿を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先述した〔課題1〕に関しては、当初の計画以上に進展した。県里親会や詳しい方々との繋がりを持つ中で、未整理の資料の目録を作成したり、里親の方にインタビュー調査をすることができた。調査を行う中で知ったのは、近年、里親として長く活動されていた方が亡くなったり、里親会の財政困難のために保管されていた史料を破棄してしまうことが多く、史料散逸の危機になるということである。貴重な資料をいくつも収集、整理し、目録作りを行うことができた平成29年度の研究成果は、本研究の進展のみならず、後世の研究にとって非常に大きな意味を持つことになると考えている。 一方で、〔課題2〕については当初の計画とは異なり、次年度の内容を前倒しして行う形となった。次年度の内容のほうが資料収集が容易かったためであり、研究発表や投稿も行うことができた。 以上のように〔課題1〕は予想以上に良い成果を上げられたものの〔課題2〕は当初の計画に沿っていないため、「おおむね順調に進展」という評価にさせていただいた。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、以下の3点で研究を進める計画である。 〔課題1〕全国里親会の刊行物について、平成29年度に閲覧させていただいた資料の整理と目録作成を行う。また、平成29年度に築いた繋がりをもとに、更なる資料発掘を行いたいと考えている。平成29年度はインプットに集中したところがあるので、集めた資料の分析と研究論文執筆に割く時間をより多くとり、研究成果に結び付けたいと考えている。 〔課題2〕平成29年度に進めることができなかったPHW資料の収集と分析を行う。 〔課題3〕これまで研究を進めてきた中で、戦後と戦前・戦中の里預けの慣習の連続/不連続 に強く関心を抱くようになった。戦後どう変わったのかを明らかにするために戦前の里預けの慣習を知る必要があり、時間が許せば先行研究や資料の分析などを行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度には、国立国会図書館における連合国軍総司令部公衆衛生福祉局(PHW)関連資料の調査を行うことができたなかったため、平成30年度に実施したい。
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