研究課題/領域番号 |
17K13992
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研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
畠山 大 岩手県立大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (10616303)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | カリキュラム意識 / プロジェクト論 / 新教科開発 |
研究実績の概要 |
当該研究課題の目的に照らして、今年度は特に「プロジェクト型学習」並びに「新教科開発」に焦点を当てて、教師の「カリキュラム意識」の特質を精緻化する以下の研究を行った。 第一に、プロジェクト論(プロジェクト型学習)の理論的・歴史的分析である。デューイやキルパトリック等に見られるプロジェクト論の特質及び近年実践の蓄積が見られるプロジェクト型学習の展開について、理論的・歴史的な視点から再分析を行った。先行研究の蓄積を踏まえつつ、近年、米国教育哲学者ジェーン・R・マーティン氏が取り上げたニューヨークのリトル・レッド・スクール・ハウスの実践も視野に入れて、そこでのグループ・プロジェクトの意義についても分析を行った。 第二に、新教科開発の理論的研究である。日本国内における新教科開発の事例分析を実施した。これまで研究協力をいただいていたT県N町の実践に引き続き着目し、幼児期から青年期までを見通した新教科を核とするカリキュラム開発の動向と、そこに見られる教育関係者の専門性について分析を行った。ただし、コロナ禍の影響から、実際の実践分析までは実施できず、これまで蓄積されてきた各種実践資料等に基づく分析に止まった。 そして第三に、「カリキュラム意識」概念の理論的研究である。野村芳兵衛、鳥山敏子、仲本正夫の三氏の教育実践に着目し、当該研究課題の中心概念である「カリキュラム意識」(教育実践の創出を支えている教師の創造的な専門性)概念の理論研究を一層進展させた。この概念の精緻化は、上記第一・第二の研究を支える重要な鍵となるものであり、当該研究課題の柱となるものである。この研究の進展によって、プロジェクト論や新教科開発に関わる教育関係者の認識論的な特質を、さらに精緻に分析することが可能となる。この見通しをもって、野村、鳥山、仲本の三氏の実践記録の分析を行い、「カリキュラム意識」概念の理論的な精緻化を図った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍の影響が続き、今年度も国内外の学校訪問調査を予定通り実施することができなかった。そのため、本研究課題の当初予定であった教育実践の分析までは実施することができず、その点で見るならば、研究活動としては不十分なものとなってしまった。 しかし、その一方で、今年度は年度当初に研究計画の再構成を行うことで、1年間の研究活動を理論的・歴史的研究に重点を置く方向性に切り替えた。そのため、これまで収集した各種研究資料や遠隔で得ることのできる情報の分析によって、一定の理論的成果を得ることも可能となった。 結果として、今年度については、当初予定とは異なる研究内容となったものの、次年度以降に再度予定している教育実践の分析に必要な理論的成果を得ることが出来たため、今後につながる研究活動となった。以上の理由から、「(2)おおむね順調に進展している」の判断とした。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、今年度に実施予定であった国内外の学校訪問調査の実施を予定したい。コロナ禍の影響がどこまで続くか不透明であり、次年度も実施できるかどうか、現時点で判断できない状況であるが、可能な方策を検討し、成果の見込める調査を実施したい。 その一方で、今年度と同様に理論的・歴史的なアプローチによる研究も同時並行で実施し、学校訪問調査に基づく研究活動を補充できる成果を見込みたい。 加えて、次年度は研究成果のまとめとなる年度となることから、これまでの研究成果に基づく研究発表にも十分な取り組みを行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定であった学校訪問調査が実施できなかったため、その調査にかかる旅費の支出が行えず、次年度使用額が生じている。また、学校訪問調査に基づく研究成果報告書の刊行も予定していたが、これも調査自体が実施できなかった関係から、次年度使用額として繰越すこととなった。 残額については、次年度に、学校訪問調査およびその成果に基づく研究成果報告書の刊行に使用する予定である。
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