本研究は、少子高齢化社会における地域教育経営の構造的変容と学校づくり実践モデルの検討を行うことを目的として、北海道宗谷地方における教育運動・実践の歴史的経過と現在の実態分析を研究の対象としてきた。 平成29年度の研究により、宗谷地方の教育運動の背景としてへき地級地対策の運動が重要な意味を持つことが分かり、調査を継続してきた。その含意は、離島を含め中央からの距離が離れている宗谷地方にとって、地域内の学校がへき地学校指定を受けるかどうかは極めて重要な意味をもつということである。へき地として指定されることは学校の財政と直結しており、最終的には子どもの教育を充実させられるかどうかということに行き着く。宗谷地方では、教育関係者が学び合い、この問題に向き合うとともに、子どもたちに必要な教育条件について研究してきたことがうかがえる。 本年度は、こうして重要視されたへき地教育の問題により焦点化し、上述のへき地級地について詳細に調査するため、その基準となっているへき地教育振興法、及びへき地教育振興法施行規則について詳細に調査した。へき地教育振興法は、へき地の教師たちが自主的な研究と運動を重ね、教育行政関係者と共に作り上げた法律であり、教育現場の声を直接的に政策に反映させたものといえる。へき地指定の詳細な基準はへき地教育振興法施行規則において定められており、この基準は時代の変化を受けながら変容し、教育条件を整えてきた。 北海道宗谷地方においてはこうした基準の変化に対応しつつ、基準そのものの提案活動も行ってきたことが聞き取り調査等で明らかになってきた。さらに、こうした背景には教育を地域的に支えてきたこと、その中で教育関係者が学びを深めてきたことが重要な意味を持つことが明らかになった。
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