本研究の目的は、自律的な学校マネジメントの確立に資する学校財務評価モデルの構築である。小・中・高等学校において高い実施率である学校評価の一領域と捉えることができる学校財務評価について、(a)学説・(b)制度・(c)実践の3つのレベルにおいて研究を進めてきた。 2019年度においては、学校財務に関わる(b)制度と(c)実践についての学校事務職員を対象とする全国オンラインアンケート調査の結果をまとめ、分析を行った。その結果、学校事務職員の経験年数が長いこと、公費令達予算額が多いこと、校長に支出負担行為が付与されていること、学校財務取扱要綱や保護者負担金取扱要綱取扱などといった要綱が整備されていることが、自律的な学校財務実践と相関性があることが明らかとなった。地方自治体においては、こうした制度の充実が求められる。 この研究結果については、2019年12月の日本教育事務学会大会で発表したほか、成果報告書として論文化した。 また、学校財務評価・実践の対象であり、これの背景である保護者の私費負担の状況を、共著『隠れ教育費 公立小中学校でかかる費用を徹底検証』として出版した。本書は、公立小中学校でかかるモノ(制服など指定品・ワークなど教材・紙など消耗品)とコト(部活動・給食・修学旅行)について費用の面から検証し、その全体像を明らかにした。さらに、歴史や法理念からしてそれらの私費負担はどうあるべきかを論じ、具体的な学校財務実践としてどのような対応を学校はとっていくべきかを述べた。本書は、上述の学会大会において、研究奨励賞を受賞した。
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