当研究は、地域担い手人材が地域に関心を向ける動機や意欲を「『地域回帰』志向」と呼び、この形成過程と要因を教育学的観点から類型的・数値的に明らかにするとともに、人材育成プログラムを開発・実施し、その効果を検証しようとするものである。 調査地としては、地域事情や状況等の変化等を勘案・考慮して、宮城県気仙沼市、南三陸町、新潟県粟島浦村、新潟県阿賀町、上越市、山梨県小菅村、滋賀県近江八幡市の7地域を最終的に設定した。また、威光暗示効果を軽減するための予備調査地として、宮城県塩竈市、秋田県大館市、能代市、上小阿仁村、大仙市、仙北市、由利本荘市、岡山県矢掛町を設定し、本調査設定にかかわる調整のための予備的調査を実施した。 当年度は、上記調査地の内、主要調査地を中心に、(1)アンケートの本実施、(2)ワークショップの本実施、(3)モデルプログラム試行を実施することで、地域回帰志向にかかわる教育的要因の類型・数値化による量的分析を行うと共に、予備調査地でのヒアリング調査を中心とした質的分析による検証を行うことにより、研究課題を達成した。 上述(1)~(3)の調査に当たっては、参加型評価(アセスメント)の手法を取り入れて、地域担い手人材やその支援者の参加によるワークショップ型の調査を行い、現地の社会的文脈に合わせた評価指標・項目の導出と設定を試みた。これにより調査対象地域及び調査対象者の文脈や声を反映させたより適合度の高いアンケート調査項目や評価指標を導出・設定を可能とし、地域回帰志向要因とその形成プロセスの類型・数値化による可視化を実現させることができた。 これら研究活動の結果、当初予定していた地域回帰志向の形成要因とその類型的・数値的可視化の実現にとどまらず、一部地域においては研究プロセスの中で、研究対象者自身が新たな取組に向けた学習実践の試みを行う動きが出るなど副次的成果も得られた。
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