研究課題/領域番号 |
17K14002
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研究機関 | 金沢星稜大学 |
研究代表者 |
大畠 菜穂子 金沢星稜大学, 教養教育部, 講師 (70727859)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 教育行政 / 地方自治体 / 教育委員会 / 教育長 / 教育委員会事務局 / 委任 / 専決 |
研究実績の概要 |
本年度は、前年度に引き続き、政令市、中核市、県庁所在市の教育委員会の事務委任規則と議事録について考察を行うとともに、分析結果のとりまとめと公表を行った。具体的には以下の点を明らかにした。 第1に、教育委員会の議決事項と教育長の専決事項について考察を進めた。議決事項については、政令市・中核市・県庁所在市の間で活用の差はみられないものの、専決については政令市で積極的に活用されていることを明らかにした。中核市や県庁所在市では、教育長の専決として明示される事務は限定的であった。また一部の中核市では、本来教育委員会の議決事項であるべき項目を教育長の専決にしているものも確認された。 第2に、教育委員会規則上の重要異例事項の扱いについて考察を行った。重要異例事項が生じた場合に、教育委員会への付議を求める規定は多くの自治体で定められていたが、義務の程度には差異が確認された。付議を義務づける自治体が半数程度ある一方、半数に満たない自治体は「付議できる」という形で教育長に付議の判断の余地を多分に付与していた。重要異例事項の報告についても、自治体間でその義務の程度および内容に差異が確認された。 第3に、教育委員会会議について新たに2019年度の議事録の分析を実施した。2019年度は、新型コロナウイルス感染症によって学校の臨時休業が決定されており、重要異例事項の付議・報告の状況を検証することが可能となったためである。その結果、臨時休業について教育委員会に付議したのは、ごくわずかの自治体にとどまり、報告のあった自治体を含めても半数にとどまった。つまり重要異例事項の付議や報告を義務づける規則と実際の実務に乖離状況が生じていることを意味する。 以上、本年度の分析結果は、各自治体であらためて委任や専決の規程を見直す必要性を示唆するものであり、教育委員会の運営を考える上で重要な意義を有するものといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、教育委員会の事務委任規則と議事録の分析結果についてとりまとめと公表を行った。その際、新型コロナウイルス感染症による学校の臨時休業という重要異例事項に対する各自治体の対応を比較検討するべく、2019年度の議事録分析を追加的に実施した。それにより事務委任規則と実務の対応関係を検証することが可能となった。他方、本年度後半に予定していた教育委員会の法的責任の分析に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたる次年度は、残された課題として、判例データベースを用いた教育委員会の法的責任の分析を進める。とくに本年度の考察で明らかとなった重要異例事項への対応がひとつの論点となると考える。重要異例事項については、公安委員会を対象にした裁判例が近年確認されることから、他の行政委員会の動向も参照しながら考察を行うこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大により自治体の現地調査が実施できず、代替手段としてメール等による照会を実施したことから次年度使用額が生じた。最終年度である次年度は、教育委員会の法的責任の在り方を検討するにあたり、他の行政委員会や私法の領域の研究成果ならびに海外文献の収集が必要であることから、文献収集費用、最終報告書の作成費用を中心に使用することとする。
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