本研究は、教育委員会組織内部の権限と責任を明確化するため、政令市・中核市・県庁所在市の事務委任規則及び議事録を用いて、教育委員会の事務の3つの執行方法(議決事項、専決事項、委任事項)を峻別し、合議体の教育委員会が実質的に責任を負う領域を明らかにするものである。 研究期間を通じて、これまで明確にされてこなかった合議体の教育委員会が担う意思決定の範囲を具体的に明示するとともに、政令市と中核市・県庁所在市間での運用の差を明らかにすることができた。期間を再延長した2022年度は、海外(アメリカ、カナダ、オーストラリア)の教育委員会の議決事項と法的責任に関する研究の知見を摂取するとともに、海外の動向がどの程度日本において適用可能かを含め、教育委員会の法的責任の考察を行った。とくに2014年の「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の改正によって、教育委員会の教育長に対する指揮監督権限が削除され、教育委員会の教育長に対する上級行政庁としての性格が不明瞭となったことの影響は大きく、教育長への包括的な事務委任が行われているなかで、委任の特例として教育委員会への付議や報告が必要とされる重要異例事項をどのように判断するかが今後の論点となりうることを確認した。 本研究で得られた研究成果については、調査対象自治体等に発送し社会的還元を行った。また、当研究課題の研究成果も取り入れる形で論文を執筆し、『日本教育制度学会創立30周年記念誌』に掲載される予定となっている(2023年11月頃刊行予定)。
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