本年度は先行研究と一次史料の調査を行い、以下の文献を収集した。 1.広島県師範学校附属小学校訓導時代に檜高憲三が書き記した「研究ノート」(ノートはA5版サイズで、1冊目の表紙に「体操 大正八年度 Ⅰ」、同じく2冊目に「体操 大正八年度 Ⅱ」と題されている)を収集した。 2.中国地方5県の各県立図書館において、「教育会雑誌」を収集した。 本年度は、檜高憲三の遺族が所蔵していた史料を収集・分析して、檜高憲三の教育思想や実践を明らかにすることを試み、その成果を中国四国教育学会で口頭発表・論文投稿を行った。大正期の体操科には児童の健康増進や国民体位の向上など国家的、社会的要請が根強くあり、熱心な学校や教員によって体育研究が盛んに行われた。こうしたなか、檜高憲三は体育専門家である永井道明や桜井恒次郎の理論を講習会や著作を通じて学び、生理学や解剖学に根拠づけられた体操教材を自らの授業実践に取り入れていた。すなわち、檜高の体操教育は千葉命吉の教育理論を受容するだけではなく、当時の先進的な体操教育論に基づきながら、子どもの発育や内臓諸機能の向上を図っていたことが明らかになった。
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