研究課題/領域番号 |
17K14008
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研究機関 | 愛知大学 |
研究代表者 |
吉本 篤子 愛知大学, 国際コミュニケーション学部, 助教 (80771005)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 教育学 / 教育史 / 読書教育 / 児童文学 / 教育思想 / ドイツ新教育 / 人間形成 |
研究実績の概要 |
平成29年度に実施した研究は、史資料の調査、整理および先行研究の整理、文献の精読であった。 史資料の調査については、日程の調整ができなかったため、当初予定していたドイツへの訪問調査を行うことができなかった。したがってドイツ各地の公文書館や図書館に所蔵されている史資料についての調査、文献等の収集は進んでいないが、これまでに収集した資料を集中的に読みこみ、整理を行った。 史資料の整理については、こちらも以前に収集していた、ハインリヒ・ヴォルガスト編の児童書シリーズの編集方針についての整理を進めた。その紹介を兼ねて、所属大学の小冊子に「子どもと古典」と題する論説として児童書運動の概要とヴォルガストの読書教育論の特徴をまとめた(愛知大学語学教育研究室編「Lingua」第12号所収)。また、読書教育運動として児童書運動の概要をつかむために、児童書運動を支えた教員たちの経歴や活動を個別に調査し、整理した。 文献の精読については、ヴォルガストの主著『我が国の児童文学の惨状(Das Elend unserer Jugendliteratur)』のほか、従来の先行研究では十分に検討されることの少なかった『全体的人間(Ganze Menschen)』を集中的に読んだ。また、ヴォルガストが編集長を務めた書評紙「児童書の守護者(Jugendschriften-Warte)」のヴォルガスト以外のメンバーの論考を整理、検討を行った。 これらの作業を通じて、ヴォルガストの読書教育論の重要概念の抽出と、児童書運動の活動の概要把握を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度の研究実施計画は、史資料の収集と先行研究の整理、文献の精読であった。 史資料の収集については、日程の調整がうまくいかず、当初予定していたドイツでの資料調査を行うことができなかった。以前に収集していた文献や史資料について一部データベース化を進めることができた。また、ヴォルガストが編纂した児童書シリーズの編集方針を理解するためにシリーズの構成を整理し、編集についての分析を行うことができた。 文献の精読については、ヴォルガストの主著『我が国の児童文学の惨状(Das Elend unserer Jugendliteratur)』のほか、従来の先行研究では十分に検討されることの少なかった『全体的人間(Ganze Menschen)』を集中的に読み、新たな知見を得ることができた。また、ヴォルガストが編集長を務めた書評紙「児童書の守護者(Jugendschriften-Warte)」のヴォルガスト以外のメンバーの論考を読解、整理して運動の全体像をより立体的に理解することができた。 ただし、所属大学の異動に伴う研究環境・業務内容の大幅な変更により、当初予定していた研究を進めることが困難であった。また、2017年度は教職課程の再課程認定申請関連の対応にも時間をかけたため、本課題へ取り組む時間が減少した。 日程の都合から、学会発表を見送ったこともあり、外部への研究状況の発表という点で遅れている。 以上により、当初計画した実施計画よりもやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の研究実施計画は、予定よりやや遅れている。平成30年度では、平成29年度の作業を引き続き行いながら、前年度に不十分だった点について実施していきたい。 第一に、史資料の収集・整理を継続して行う。平成29年度に完了しなかった分の収集・整理を進める。当面の予定では、以前に収集しきれなかった児童書シリーズの収集を行う。また、児童書運動の関連書籍を購入・複写を行う。児童書シリーズについてはタイトル、編集、イラスト等のデータベース化を行い、編集方針の把握に努める。 第二に、先行研究の整理を進める。収集した先行研究の精読を通じて児童書をめぐる議論のなかで重要な論点を洗い出し、重要概念を抽出する。当時のドイツ新教育の他の活動と児童書運動との関連、また児童書運動における新教育的な側面についても考察を行う。それらの作業を通じて彼らの読書教育の構想を明らかにする。 第三に、文献の精読から、ヴォルガストの読書教育論と児童書運動の活動や活動に対する論説に対する分析を進め、学術論文にまとめていく。 第四に、研究成果の報告発表を進めていく。具体的には、研究会や所属学会等での発表のほか、所属大学の紀要や所属学会の学会誌への論文投稿を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は、異動に伴い業務が大幅に変更したため、予定の調整が困難になり、当初予定していたドイツでの史資料収集を行うことができなかった。そのため、旅費を使用しなかった。また、購入予定であった機器類も研究の進展状況から平成29年度には購入しなかったことも、使用額が減少した理由である。 これらによって発生した次年度使用額については、国内で購入する文献や複写の料金に活用したい。また、平成29年度に行えなかった調査を継続して行うなかで、次年度に使用する予定である。
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