かなり緩和されたものの、22年度も新型コロナウイルス関連の対応により研究活動は制約された。最終年度でもあったためドイツへの出張は行わず、国内で文献収集を行った。 また、これまでに収集した資料の整理・リスト化を進めた。 21年度に引き続き、ヴォルガストの著書『全体的人間』(Ganze Menschen)の検討を行った。21年度は『全体的人間』のArbeit概念について検討を行ったのに加えて、22年度は①Arbeitのほか、SpielやHumanitaetなどの重要概念との関わりをヴォルガストがどうとらえ、それらの概念と読書や子どもの成長がどう関連づけられているかの検討を進めた。 ②主著『我が国の児童文学の惨状』(Das Elend unserer Jugendliteratur)や『子どもの本について』(Vom Kinderbuch)からの変化を、とくに読書による人間形成論的な観点から整理、分析を行った。③人間形成的論のなかでも道徳的な成長についてのヴォルガストの理解が、他の新教育運動の教育者とどのような影響関係にあるかについても検討を行った。 以上の研究について論文発表の準備を進めており、2023年度中に論文として公表する予定である。研究期間中に十分に検討できなかったテーマとして、①研究期間中に収集、整理したヴォルガスト編纂の児童書シリーズの分類と編集方針、著書との関わり ②同時代の思想家と共通する読書による人間形成的な影響についての分析 などのテーマに今後も取り組む予定である。
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