研究課題
最終年度の2020年度では、コロナ禍のために海外での資料調査はできず、主に調査済みの資料を整理するにとどまった。これまでの成果をまとめたものとして「満洲の子どもを「新教育」で育てる ─ 教育雑誌『南満教育』の分析を通して─」(『日本の植民地教育を問う 植民地教科書には何が描かれていたのか』(皓星社、2020年)を刊行した。また、是まで収集した資料を用いて「戦後国民政府期の「甄審」反対運動 -青島における「費筱芝殺害事件」を中心に-」(アジア教育史学会第29回大会 2020年8月29日)を発表した。さらに、先行研究整理として「戦後における満洲教育史研究の始まり -平野健一郎氏の研究を中心に-」(日本植民地教育史研究会第44回研究例会 2020年11月15日)と「戦後における満洲教育史研究の展開 -槻木瑞生氏の研究を中心に-」(近現代東北アジア地域史研究会第 30 回大会 2020年12月5日)を発表した。以上の研究によって、二点の貢献を行ったと考える。第一に満洲教育史研究が戦後どのように行われてきたのか、その研究史的整理を行った。満洲教育史研究は、単に教育史研究を深化させただけでなく、国際関係学的視座を提示することで、近現代アジア史の中に位置付けることを試みた。第二に、「戦前/戦後」の連続的側面について、日本側の占領地政権によって管轄されていた山東省青島を事例に、戦時下から国民政府期にかけての教員人事というミクロな視点から具体的に描くことを試みた。この試みは今後の研究につながる基盤的役割を果たすだろう。
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