本年度は、前年度に行った、市民性教育の格差是正への政策的・制度的支援の先駆的事例である、イリノイ州および同州シカゴ学区(教育委員会)の事例の調査で得られた知見を整理し、学会発表や論文を通じてその成果を公表することができた。その成果は、大きく2つに整理できる。 1)イリノイ・デモクラシー・スクールの取り組み イリノイ・デモクラシー・スクールは、市民性教育を核とした学校づくりに取り組む学校を、外部機関が評価を通じて認定し、またその改善を支援する取り組みで、全米的にも注目されている。この取り組みでは、学校全体で市民性教育に取り組む州内の学校の認定を通じて、こうした学校を後押しするとともに、市民性教育の内容・方法や実践を支える学校経営のありようまで幅広い視点の評価項目を設定し、参加校の取り組みの継続的な改善や、多様な学校関係者の参加を促すものとなっていた。 2)シカゴ学区の取り組み 大都市学区として知られるシカゴ学区では、市民性教育をめぐる格差是正が課題となっていた。そこで同学区では、イリノイ州が中等教育段階で必修化し推し進める公民科での取り組みにとどまらず、学校全体での幅広い市民性教育改革に取り組む。それらは、「公民科」「サービス・ラーニング」「ステューデント・ボイス・コミッティー」という3つの実践を柱としている。また学校評価の中にも市民性教育の視点を組み込み、全校的な取り組みを促すとともに、教員研修や外部サポートなど、その実現に必要な支援も積極的に行っている。
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