本研究では、アメリカにおいて低所得層やマイノリティの子どもが学校で十分な市民性教育を享受できず、市民性教育の格差が生じている状況に鑑み、その是正に取り組むべく、すぐれた市民性教育実践を広範かつ持続的に展開することを目指す制度的・政策的支援について、主にイリノイ州およびシカゴ学区の事例をもとに研究した。その結果、州政府による公民科等の中核的な領域の推進を基盤としながら、学区教育委員会や外部団体が市民性教育を核とした学校づくりの評価や支援を行い、学校全体での取り組みを進めていくという重層的な改革の構造が明らかになり、実際の事例校の調査などから、これらの取り組みが一定の有効性をもつことが示唆された。
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