研究最終年度には、保育士577名へのアンケート調査を実施し、早期離職にいたる要因の分析を行った。調査結果からは、20代後半の保育士は、「今の職場で働き続けたい」と思う人がすべての年齢で最も低かった。その要因として考えられることとして、「仕事よりも家庭を重視したい」と回答する人も20代後半が最も多く、さらに「将来、子育てと仕事を両立していくことに不安を感じる」と回答した人も20代後半が最も多かった。 また、結婚や出産後の働き方について、「結婚や出産をしても保育士として正規職員で働 き続けたい」と答える人は、20代前半では20%を下回り、20代後半でも30%を下回っている。一方で、「結婚や出産をしたら保育士として非正規で働き続けたい」と答えた人は、20代前半では35%程度となっている。さらに、「将来的に家族・親族等のサポートが受けられる地域で働きたいと思いますか?」という問いに20代は80%近くが「はい」と答えている。 つまり、M字雇用が解消され、女性の就業率が80%近くとなった現在でさえ、若い保育士の早期離職の要因のひとつは、特に子育てをめぐるワークライフバランスの問題であることが、研究からは明らかになった。特に保育士が保育所に努める限り、勤務時間の問題等で、自らの子どもを保育所利用によって子育てをすることに、時間的な制約が付きまとうことは明らかである。そのため、労働時間の融通の利く非正規での雇用や、家族による支援を求めていると推察される。したがって、保育士の早期離職を防ぐためには、リカレント教育によるサポートと同時に、保育士自身の特別な子育て支援政策の検討が必要であると考えられる。
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