本研究は、日本が世界に先駆けて経験している高齢社会を、社会の持続可能なあり方を探求することを目的とするサステイナビリティ学における重要な教育課題として捉え、これをテーマとする演習教育の実践と評価を地域づくりに関わる人材と共同で実施した。具体的な方法論としてアクション・リサーチの手法を用いた。 本研究は、秋田県南秋田郡五城目町をフィールドに選定し、「縮小高齢社会における地域づくり」をテーマとした演習教育を地域づくりに従事する人々と共同実施した。現地での定期的な打ち合わせを通じて、同地域での地域づくりの全体像を捉えることに努めた。高齢者の生活環境、空家の利活用、農林地の管理などの多様な地域課題が地域づくりのなかで扱われるなかで、本研究での演習教育においては、地域住民が日々の暮らしをより良くしたいという思いを持ち、それを具体的な活動にするマインドセットに注目し、これをローカル・アントレプレナーシップと定義した。 H30年度の演習は、事前準備、現地調査、リフレクションを通じての学びの自覚化によって構成された。現地調査では、ローカル・アントレプレナーに対するインタビュー調査を行い、特に個人の動機と運営に重要な役割を果たしている人々のネットワーク分析を行った。この調査を通じ、ローカル・アントレプレナーがアイデアを実際の取り組みに展開していく際に必要な場所や設備、制度的手続き、メンターなどを紹介する仲介者の重要性(role of intermediaries)が明らかになった。 本研究では、実際に高齢化の進む地域での現地調査を通じてローカル・アントレプレナーシップの醸成に重要な項目を明らかにしながら、同時にその過程を地域側の人々と共同で演習教育として構成した。この中で地域側からのフィードバックを取り入れながら評価を行うことで、その内容を演習教育に同時並行的に取り入れた。
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