本研究は、大学に対する公的研究資金の投入や学内の人材配置の実態が、大学の研究財源基盤や研究生産性に与える影響について、計量経済学モデルを用いてマクロとミクロの両視点から定量的に分析し、政府による大学への資金配分政策へのひとつのエビデンスを提示することを目的とする。
2017年度は主に分析データセットの構築を行った。2018年度には、データセットを用いたファクトファインディングやヒアリング調査の調整を中心に行うとともに(2018年5月11日~2018年8月28日は産休により研究中断)、国公私立大学の中でも多額の公的資金が投下される国立大学に着目し、論文数を研究成果としたときの研究生産性について、OLSおよび操作変数法を用いて、工学・医歯薬・理学・農学の4学問分野を区別した部局レベルの分析を行った。成果は、大阪大学経済学研究科およびMPRAディスカッションペーパーにまとめた。2019年度には、6月に開催された日本高等教育学会第22回大会(於金沢大学)で成果報告した後、ヒアリング調査の結果とともに論文改訂を行い、学術雑誌への投稿作業を行った。2020年度には、投稿論文が日本計画行政『計画行政』第44巻第2号に掲載が決まり、新たな研究として、大学が調達する外部資金調達に関する分析を行うため、データセットの構築を進めた。
2021年度は、運営経費の大部分に公的資金が投入されている国公立大学に焦点を当て、公的研究資金の配分が、大学の民間資金の獲得実態に与える影響について実証分析した。具体的には、経済学、理学、工学、農学、医歯薬の5つの学問分野について、部局レベルで、公的研究資金の配分が民間資金の獲得を妨げる(クラウド・アウト)のか、誘発する(クラウド・イン)のか、を検証した。その際、研究に従事する人材の影響にも注目している。成果はディスカッションペーパーにまとめた上で、投稿予定である。
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