本研究の目的は、アクションリサーチの手法を用いて、発達障害のある児童が学校において包摂(inclusion)されるための条件を解明すると同時に、学校教員の発達障害児理解を促し、発達障害児を包摂する学校・学級づくりのための方略を考究することである。 2019年度は、前年度までと同様、ひと月に1回程度学校フィールドワークを継続して行った。ただし、新型コロナウィルス感染症の影響により、3学期はフィールドワークを実施することができなかった。2019年度のフィールドワークにおいては、教員の「子ども理解」や「子どもに対するまなざし」、あるいは担任教員の「学級経営」に着目し、フィールドワークを実施した。また、校長の異動により、校長が代わったこともあり、これまで以上に新任の校長と情報共有・意見交換を密に行い、校長の交代による学校文化の変容について検討を行った。必要に応じて前校長からも聞き取りを行った。 フィールドワークを行っている当該学校においては、「共生・共学」という、いわゆる「インクルーシブ教育」の理念が学校文化として根付いており、その理念に基づいて学習指導、生活指導が行われていた。しかし、近年、その「理念」が継承されなくなっているという「懸念」が一部教員たちの間では広がっている。特に、新任教員をはじめとする若い教員のなかにはそのような「理念」が継承されていない者もおり、発達保障論の立場による学級経営、生活指導が目立つようになってきている状況があることが分かった。これらの状況をふまえつつ、「発達障害児を包摂する学校・学級づくりのための方略」を導き出すことが喫緊の課題である。 研究成果として、2019年4月から雑誌「月刊高校教育」において、連載「特別支援教育のいま」を開始し、2019年度は12回分の執筆を行った(継続中)。
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