研究課題/領域番号 |
17K14030
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
勝田 光 筑波大学, 人間系, 特任助教 (30792113)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 責任の段階的移行 / 児童の創造力 / リーディング・ワークショップ / 影響力のある教師 |
研究実績の概要 |
本年度の研究実績として6点挙げられる。1点目は、ブック・クラブの指導法の理論的枠組みである読むことの「責任の段階的移行」モデルに対する批判と修正版モデルを検討したことである。5月27日に開催された全国大学国語教育学会で発表した後、査読付きの学術誌『人文科教育研究』に投稿して採択された。2点目は、2017年7月14日~17日にかけて開催されたInternational Literacy Associationの年次大会に参加したことである。ブック・クラブに類似した指導法に関する本を多数出版しているLaura Robbの主催するワークショップに参加した。ワークショップ終了後、面会して次年度に授業参観する許可を得た。3点目は、筑波大学附属小学校の青山由紀教諭による授業で児童が創作した物語を収集して分析したことである。その分析結果は、学術誌『国語と教育』に投稿して採択された。4点目は、2018年2月11日に開催されたSEAMEO- University of Tsukuba Symposium VIにおいて、意味マップを用いた読みの授業における中学3年生の学習過程を発表したことである。そこでの質疑応答の結果を踏まえて作成した原稿がspecial issue of SEAMEO Journalに掲載されることが決まった。5点目は、ワークショップ型の読むことの学習指導を実践している筑波大学附属駒場中学校・高等学校の澤田英輔教諭による授業を記録・分析したことである。現在、共著で査読付きの全国誌『国語科教育』に投稿中である。6点目は、元カリフォルニア大学教授のロバート・ラデルが提唱した「影響力のある教師」という概念と、彼の調査研究を検討したことである。その成果は、査読付きの学術誌『九州国語教育学会紀要』に投稿して採択された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、ブック・クラブの指導法を提唱したTaffy Raphael教授に連絡をとり、米国での授業観察を中心に行う予定だった。しかし、彼女と連絡をとった結果、既に退職し、ブック・クラブ型の実践を行っている教諭とのつながりも現在はないということが分かった。米国での授業観察については、現在日程やフィールドを調整中であり、当初の計画とは異なり実現していない。一方、次年度以降に行う予定だった国内調査において、筑波大学附属小学校の青山由紀教諭による授業で児童が創作した物語を収集し、分析することができた。さらに、読者反応理論やホール・ランゲージなど理論的背景はブック・クラブと類似しているものの、指導法が異なるリーディング・ワークショップの実践を観察する機会も得られた。これは、当初の計画に含まれていなかったものの、ブック・クラブ型の指導法の意義や課題を検討する上で大変重要な調査になったと考えている。以上のように、国外調査が予定通り進まなかったものの、国内調査が当初の計画以上に進んだため、全体としては「おおむね順調に進んでいる」と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
3年計画の2年目となる平成30年度も引き続き、青山由紀教諭と澤田英輔教諭との共同研究を進めていく予定である。青山教諭との共同研究では、小学3年生を対象にした読むことの学習指導において物語創作活動をどう取り入れているのかをAV機器を用いて記録して、その実践の意義を検討する。澤田教諭との共同研究では、生徒がリーディング・ワークショップで読むことをどう学んでいるのか、生徒へのインタビューを通して彼らの学習過程を分析する。さらに、リーディング・ワークショップで学んだことがエッセイや小説を書くライティング・ワークショップによる学習にどう結びついていくのかも検討する予定である。これら1年目の成果に基づく調査に加えて、米国でのブック・クラブ型の指導の実地調査も実現したい。
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