研究課題/領域番号 |
17K14030
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
勝田 光 東洋大学, 文学部, 講師 (30792113)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | リーディング・ワークショップ |
研究実績の概要 |
本年度は、筑波大学附属駒場中・高等学校の澤田英輔教諭によるリーディング・ワークショップ、ライティング・ワークショップならびに『山月記』を教材とした伝統的な読みの授業全20時間×2クラス分、合計40時間を観察して記録した。授業後、生徒へのインタビューと質問紙調査も実施した。これらの観察・調査と並行して、昨年度観察・記録した澤田教諭によるリーディング・ワークショップの1時間の授業記録を分析し論文にまとめ、それが査読付き全国誌『国語科教育』に採択された。本年度収集したデータは、現在分析中であり、2019年10月10日~13日に開催されるInternational Literacy Associationの年次大会で発表することが決まっている。リーディング・ワークショップの効果を、従来の教科書教材を用いた読むことの学習指導と比較して、その効果を検証するという視点を得て、その分析のためのデータを収集できた点が本年度の最大の成果である。 一方、物語創作を取り入れた授業実践については、筑波大学附属小学校の青山由紀教諭と3回会い(2018年6月18日、8月13日、2019年3月27日)、物語創作を取り入れた実践と、その効果を検証する方法について議論した。現在、実践とその効果の検証に先立ち、読むことと書くことの関連を調べた研究のレビュー、これまでに行われてきた物語創作実践の整理を行っている。イリノイ大学シカゴ校名誉教授ティモシー・シャナハンが提示する読むことと書くことの関連についての4つのタイプを具体的な授業実践のレベルで青山教諭と協議できたことが成果としてあげられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一部研究計画を修正した部分があるが、全体としては「おおむね順調に進展している」。 澤田教諭によるリーディング・ワークショップは、全5時間分を記録し、生徒へのインタビューと質問紙調査も実施できた。加えて、ライティング・ワークショップ全13時間、教科書教材「山月記」を用いた授業全7時間を観察・記録したことは当初の予定にはなかったものの、リーディング・ワークショップを他の授業と比較して、その効果を検証するために必要だったと考えている。 一方、当初予定していた米国のブック・クラブ型の指導の実地調査は中止にした。その理由は、澤田教諭が米国のリーディング・ワークショップの実践を日本の教育制度・条件に即した形で修正を加えて実践しており、米国のブック・クラブ型の実践を実地調査するよりも、日本でどのように米国の読みの指導法を修正して実践しているかを発表する方が良いと判断したためである。次年度、International Literacy Associationの年次大会で発表することを手始めに行う。 当初予定していた、青山教諭による物語創作を取り入れた読みの授業は観察していない。これは授業観察に先立ち、これまで物語創作を取り入れた読みの実践がどのように行われてきたか、読むことと書くことの関連が研究上どのように議論され、実証されているのかを整理する必要があるという結論に青山教諭との議論の積み重ねから至ったためである。 以上、当初の計画とは異なる部分も生じているが、作業量や得られる見込みの研究成果はほぼ同じかそれ以上であり、「おおむね順調に進展している」と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、これまでに行った研究をまとめ、その成果を発表する年度として位置づけている。まず、2018年に観察・記録したリーディング・ワークショップ等のデータを整理・分析し、2019年10月に開催されるInternational Literacy Associationの年次大会で発表する。その結果を踏まえて論文にまとめ、査読付き国際誌Journal of Adolescent and Adult Literacyに投稿する。次に、これまで物語創作を取り入れた読みの実践がどのように行われてきたか、ならびに読むことと書くことの関連が研究上どのように議論され、実証されているのかを整理し、査読付き全国誌『読書科学』に投稿する。
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