本研究の目的は、ブック・クラブという指導法に着目し、国語科における従来の指導法―教科書の文章を全員で精読した後、感想文を書く―と比べて、この指導法の意義を明らかにすることだった。 主な成果として、(1)ブック・クラブの指導法の理論的枠組みである「責任の段階的移行モデル」に対する批判とこのモデルの修正版を検討したこと(勝田光「米国における読むことの『責任の段階的移行』をめぐる議論について」『人文科教育研究』第44号)、(2)物語創作活動を読むことの学習指導に取り入れてブック・クラブと類似した実践を行っている筑波大学附属小学校の青山由紀教諭の実践を分析したこと(勝田光「小学校国語科における物語創作指導をゴールにした読むことの学習」『国語と教育』42号)、(3)物語創作活動を取り入れた読むことの学習指導について、とくに読むことと書くことの関連という視点から理論的実践的に検討したこと(勝田光「『作家のように読む』論と『作文泥棒』の実践」『月間国語教育研究』569号)、以上3点があげられる。 さらに、ブック・クラブの指導法に着目して研究を進める中で新たに知ることとなったリーディング・ワークショップという指導法について、当時筑波大学附属駒場中・高等学校教諭だった澤田英輔教諭の実践を分析したこと(勝田光・澤田英輔「リーディング・ワークショップによる優れた読み手の育成」『国語科教育』84号)、生徒への質問紙調査とインタビューを行い、リーディング・ワークショップの意義について教科書を用いた一斉授業と比較して検討したこと(Katsuta & Sawada投稿中「Encouraging independent readers」)、以上2点も当初の計画にはなかったものの、ブック・クラブに関する研究を進めていく中で得られた成果である。
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