本研究の目的は、保育者を目指す学生が音楽づくりを通して表現する力を獲得するための実践プログラムを開発し、その有効性を実証的な研究方法を用いて検証することであった。保育者は幼児の表現を理解する、表現を創発させる環境を設定する、表現する意欲を刺激する題材や教材を設定するなど、幼児の表現する力が発揮されるような指導力や援助の技能を獲得する必要がある。音楽づくりは、音素材を探索し、それらを構築して自分の意図を表現する活動である。この点で、音楽づくりは学生の表現する力を育成するのに効果的な活動であると考えた。そこで本研究では、学生が表現する力を獲得するための音楽づくりの実践プログラムの開発を目指した。 本研究では、保育者を目指す大学生を対象に、音楽づくりに関する実践プログラムを立案して実施し、彼らの音楽づくりの過程を観察した。実践プログラムでは、5人程度で構成されたグループを設定し、協働で音楽を創造する活動を行った。実践プログラムの内容として、身近なものを用いた音楽づくりや絵画等を介した音楽づくりの課題を設定した。 音楽づくりの実践は、ICレコーダーによる録音とビデオ撮影により記録し、学生が音楽をつくる過程を探った。さらに実践に参加した学生が作成した省察レポートを分析し、協働で行われる音楽づくりの過程における学習者同士の相互作用や学習者の音楽づくりにおけるアイデアの発想に関する要素および理論的枠組みを提示した。この研究成果を『日本教科教育学会誌』に発表した。 以上の成果は、音楽づくりを含め、他者との協働を通した創造的な学習を実践する際に活用できると考える。
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