証明学習において,生徒が自立的・協働的に証明問題の解決・設定に取り組む活動の重要性が指摘されているが,学習指導の具体的な指針はいまだ明らかではない。この指針の解明を見据え,本研究は,証明の構想における議論(argumentation)に焦点を当て,その議論を証明の構成(問題の解決)にいかす活動,及び新たな問題の設定にいかす活動を促進するための教材と指導法を考案することを目的としている。 この目的に対し,令和元年度は,交付申請書に記載の研究実施計画の通り,本備調査の計画,実施,分析,及び教材と指導法の検証に取り組んだ。具体的には,まず,前年度の予備調査の分析と追加の先行研究の知見をもとに,中学校の代数,図形,確率の3領域においてそれぞれ2時間構成の本調査の計画,実施,分析を行い,学会での口頭発表と論文によって成果を発表した。そして,成果発表時にいただいた専門的知見を踏まえ,本調査をそれぞれ再分析し,教材と指導法の検証を行った。 このように,生徒が自立的・協働的に証明問題の解決・設定に取り組む活動を促進するための教材と指導法を,理論的考察と実践的考察を総合して開発していくことができた。 他方,教材と指導法の検証の過程で,課題と示唆として次の3点が得られた。第一は3領域における本調査を総合的に分析する必要性,第二は蓋然性に加えて多様性に焦点を当てる必要性,第三は教材と指導法の前提として3領域に共通する一般的な学習過程を構築することができそうであるという示唆である。このうち第一と第三の点について,申請時には予定していなかった質問紙とインタビュー調査にもとづく量的及び質的な分析を追加で行うことにし,研究期間内(令和2年3月)の実施を目指して調査問題の作成等の準備を行っていたが,休校により調査を実施することはできなかった。次年度以降に引き続き実施,分析,検証を進める予定である。
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