研究課題/領域番号 |
17K14035
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
八木 雄一郎 信州大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (80571322)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 書くこと / 読むこと / ミメーシス / 交流 |
研究実績の概要 |
・「続き物語」概念の検証と定立について 本研究が対象とする「物語の続きを書く」という活動・学習の独自性や新規性を検証するために、複数の先行研究にあたり、それらとの共通点と相違点を考察した。具体的には青木「第三の書く」、首藤・卯月「翻作法」、髙木グループ「書き換え」、寺井グループ「書き換え」などを調査対象とした。その結果、続き物語は、例えば髙木らが提唱する「書き換え」の実践群においては、その中の一方法論と位置づけられていることがわかった。その上で、「続き物語」には、他の文種(説明、報告、新聞作りなど)の作文とは異なる学習効果や目的が見いだしうるか否かを検証するためにナラトロジー(物語論)や解釈学の先行研究にあたった。その結果、たとえばポール・リクールによる「三重のミメーシス」理論が「書くこと」の学習における「続き物語」の独自性を保証しうるという見解に至った。 ・「続き物語」による学習促進効果の分析 中学校現場での「続き物語」活動の実践について、長野県内の公立中学校で実施した。教材は「星の花が降るころに」(中学1年・光村図書)である。いわゆる「初発の感想」に代えて「続き物語」を生徒たちに書かせて、その後読解の授業を数時間行った後、単元の終末において「まとめの感想」に代えて「続き物語」を書かせ、その内容の傾向や、読みの変化について分析を行った。その結果、多くの中学生たちが作中において明示的に語られる「私」の視点からの「夏実との関係回復」というテーマに終始することがわかった。一方で2回目の創作においては、1回目の創作に比して、その関係回復までのプロセスがより困難に、より複雑になっていく傾向があることを見いだした。ここに「続き物語」による読みの「促進」が見られると考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画であった「「続き物語」概念の検証と定立」については該当する先行研究にあたり、概念化についての基礎作業を済ませることができた。さらに2年目に実施予定であった中学校現場における予備調査を前倒しで実施し、中学生による作文データを収集することもできたので(1)とした。
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今後の研究の推進方策 |
中学校現場における予備調査(「続き物語」を採り入れた単元の実施とその分析)は、複数教材、複数学級での実施を計画している。その中から、調査対象として妥当性の高い教材および学級を検討し、本調査を行う際の具体的な教材や実施校・学級を選定する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に「B-A」が残額として残った際に、今後予定している学会発表において使用予定の機器を購入する上で残額不足であることがわかったため、その機器は次年度に購入するよう見合わせることにした。結果的に当該の次年度使用額が発生することになった。
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