国語科の「読むこと」(特に文学的文章)の授業において「続き物語」(教材となる作品の続きを想像し、創作する活動)を導入することの意味とその方法について検証を続けてきた。2016年度からの4年間で実施した調査や検証は以下の通りである①大学生を調査対象とした予備調査②中学生を対象とした本調査(研究授業)③「続き物語」を行うのに適した教材の条件についての検討④単元の中で「続き物語」を実施するタイミングについての検討⑤研究成果の報告・論文化。 ①については、小学校教材「なまえつけてよ」「大造じいさんとガン」、中学校教材「星の花が降るころに」「少年の日の思い出」(いずれも光村図書)を素材として、申請者が担当する授業の受講生である大学生たちに「続き物語」を書かせ、この活動によってどのような学びがもたらされるのかについて議論し、「続き物語」には、特にテクストを深く読み込むことを促す働きがあることを確認した。②については、上掲の教材で中学生に「続き物語」を書かせ、その内容を分析し、「続き物語」を単元の冒頭と終盤に書かせることにより、生徒たちが作品の主題に自ずから接近していく現象があることを明らかにした。③については、中学校の教員複数名と議論する場を持ち、教材の「空所」の如何によって「続き物語」の活動の正否が左右される可能性があるという結論を得た。④については、「続き物語」を書いてから読解活動に入る場合と、読解活動をしてから「続き物語」を書く場合では、前者の方が作品やテクスト理解に多様性が出ることを明らかにした。⑤については、2020年度の研究成果報告として日本国語教育学会編『月刊国語教育研究』に論文「翻案活動がもたらす「読むこと」と「言語文化」の学び」を投稿した(印刷中)。
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