本研究は、ピアノ演奏における手指の巧緻運動能力向上を図るため、演奏家のための身体法「ディスポキネシス」を従来のピアノ演奏法に援用し、独自の演奏指導プログラムを提案することを目的としている。ピアノ学習者を対象として行った動きの実践では、指先に伝達する力は緩めず、指先以外にかかる動作筋収縮を緩和させる実践後に、全演奏課題の評点平均値が優位に上昇しており、演奏時の手指の巧緻性を高めるのに有効であることが示唆された。とりわけ、難易度の高い課題で評点の顕著な上昇が確認できた。また、特定の指を動かす際、指先の触感の意識化とともに動かす指以外の身体部位に動きの制限を与えることで、特定の指の独立・分離を促すことが推察された。これらの実験から得られた結果及び考察については、学会発表ならびに紀要・学会誌の投稿により発表を行い、愛媛県松山市内の音楽ホールにおいて、専門家の協力を得て講演(講座・演奏)を開催した。 当該年度は、前年度末に開催した講演「演奏身体法に関するミニ講座・チェロとピアノによる演奏会」の動画を編集・分析して課題と成果についてまとめ、今後の研究への繋がりと研究方法について検討を行った。また、「京都音楽家クラブ会報 12月号」の執筆依頼を受け、これまでの研究で得られた知見と成果を整理し、小論文として公表した。 R4/5月~ 7月:「演奏身体法に関するミニ講座と講演」の動画編集と分析及び課題点・成果の整理 R4/8月~ 11月:「京都音楽家クラブ会報12月号」小論文執筆 R4/12月~R5/3月:報告書の作成
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