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2017 年度 実施状況報告書

必要な知識を想起する能力を育成する授業と評価水準を開発する実証的研究

研究課題

研究課題/領域番号 17K14043
研究機関大分大学

研究代表者

中川 裕之  大分大学, 教育学部, 准教授 (00450156)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード類推 / ベースの想起 / ベースの生成
研究実績の概要

本年度の目標は、知識を想起しづらい単元や内容を特定し、子どもが知識を想起できるようになるための授業を構想することであった。
そのために、まずは、知識の想起に関連する認知科学の先行研究をレビューしていった。そうして得られた知見を分析、考察することで類推におけるベースの想起、生成に関する理論を構成し、それに基づいて実験授業を計画、実施した。そして、その成果をまとめ、日本数学教育学会第50回秋期研究大会において研究発表を行った。
また、そうして得られた知見や実験結果をこれまでの自分の研究成果と比較し、整理することで類推に関する理論として構成し直し、理論部分を中心とした成果を日本数学教育学会誌『数学教育学論究』97巻Vol.105・106に研究論文として掲載し、一方で、開発した教材に関する成果を日本数学教育学会誌『数学教育』第99巻第11号に教材研究として掲載した。
そのように理論を十分に検討したうえで、中学校数学科の教員に聞き取り調査を行い、生徒が想起を苦手とする単元や内容を特定していった。そして、特定した内容と先行研究で指摘されている課題の関係を分析し、生徒が苦手とする原因について考察した。
さらに、それらの理論に基づいて特定した課題を克服する指導方法や教材を開発し、それらを用いた学習指導案を作成した。そして、学校現場の教員と意見交換することで学習指導案をブラッシュアップしていった。
本年度の最終段階では、以上の成果や分析に基づいて作成した学習指導案を用いて、中学生と大学生を対象とした予備授業を行い、その結果を附属中学校の教員と分析した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度の目標は、先行研究に基づいて学習指導案を作成し、授業実践予定者と話し合うなかでブラッシュアップすることであった。
そして、そのために、「1.これまでの研究成果に基づくとともに、知識の想起に関わる認知科学や数学教育学の文献を収集して考察すること」、「2.知識の想起に関連する先行研究において課題が指摘される内容や単元を取り上げ、認知科学の研究成果に基づいて解決策を導出して学習指導案を作成すること」、「3.授業実践協力者と学習指導案を検討し、実践可能なものへとブラッシュアップすること」を計画していた。
1.と2.に関連して、研究の成果を日本数学教育学会誌『数学教育学論究』97巻Vol.105・106と日本数学教育学会誌『数学教育』第99巻第11号、そして、日本数学教育学会第50回秋期研究大会発表集録に掲載することができた。ただし、一部投稿した論文に対する査読意見において他の理論や概念との関係に関する問題点が指摘されたため、その部分の修正についてさらなる先行研究のレビューとその考察が必要と考えている。
2.と3.に関連して、中学校数学科の教員と協力、協議する中で、生徒が想起を苦手とする単元や内容の特定、生徒が苦手とする原因の考察、特定した課題を克服する指導方法や教材の開発、そして、学習指導案の作成とブラッシュアップを行った。さらに、作成した学習指導案を用いた予備授業も行えている。
以上のことから、理論の一部を修正する必要があることが明らかとなったが、多くの研究成果を発表でき、また現場の教員と協力して様々な学習指導案を作成できていることから、研究は当初の計画通り、おおむね順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

今後は、先行研究の考察に基づいて理論的に導出した方法をよりよいものとしていくとともに、それらを具体化した学習指導案に基づいて授業を実施し、その結果を考察することで授業設計の原理を抽出することに移りたいと考えている。
具体的には、「1.1学期に数と式領域の授業を複数の学級で実施すること」、「2.2学期に図形領域の授業を複数の学級で実施すること」、「3.授業で収集されたデータをもとに、成功、失敗した要因や独自の工夫(実践知)について授業実践者達と議論し、授業設計の原理を抽出すること」を考えている。また、授業実践協力者に自分の授業以外も見学、または録画したビデオを視聴してもらい、多くの教員で議論することで、より多くの視点で生徒の変容などを考察するとともに、授業者による展開の相違点に着目して実践結果を分析してきたい。
なお、授業がうまくいかないことが続く等して、授業設計の原理が抽出できない場合には、予定している学級以外でも授業実践することや研究対象とする領域を限定することによって対応していきたいと考えている。

次年度使用額が生じた理由

研究はおおむね計画通りに進んでいますが、学会誌へ論文を投稿した際に頂いた査読意見に基づいて理論の一部を修正していることに伴い、授業実践の一部分(具体的にはベースの生成に関する授業部分)の計画に変更が生じ、学習指導案の作成やそれについて議論する研究協力者とのミーティングを延期しました。
その結果、そのための費用については次年度に使用することとし、一部の研究費を次年度使用することに決めました。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2017 その他

すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 課題探究として証明することを実現する指導法開発-領域「数と式」の枠組みの再検討と指導法の開発-2017

    • 著者名/発表者名
      中川裕之,佐々祐之
    • 雑誌名

      日本数学教育学会第5回春期研究大会論文集

      巻: - ページ: 9-14

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 課題探究として証明することの授業化と指導法の開発-領域「数と式」における第3 学年の授業実践を通して-2017

    • 著者名/発表者名
      佐々祐之,中川裕之
    • 雑誌名

      日本科学教育学会年会論文集

      巻: - ページ: 45-48

  • [雑誌論文] 数学的活動とは何か ―従来の算数的活動とどう違うのか―2017

    • 著者名/発表者名
      中川裕之
    • 雑誌名

      新しい算数研究

      巻: 561 ページ: 8-11

  • [雑誌論文] 命題を特殊化し別証明を考え一般化する方法に関する一考察2017

    • 著者名/発表者名
      波津久和崇,中川裕之
    • 雑誌名

      日本数学教育学会誌数学教育

      巻: 99(11) ページ: 11-18

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 類推におけるベース生成のプロセスに関する一考察2017

    • 著者名/発表者名
      中川裕之
    • 雑誌名

      日本数学教育学会第50回秋期研究大会発表集録

      巻: - ページ: 95-98

  • [雑誌論文] 類推の振り返り方に関する研究―類似な条件におきかえて命題をみつける類推に限定して―2017

    • 著者名/発表者名
      中川裕之
    • 雑誌名

      日本数学教育学会誌数学教育学論究

      巻: 97 ページ: 1-24

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 「□を使った式」に関する児童の認識の変容の分析─代数的推論の観点から─2017

    • 著者名/発表者名
      和田信哉,中川裕之,岩田耕司
    • 雑誌名

      日本教科教育学会誌

      巻: 40(3) ページ: 69-80

    • 査読あり
  • [学会発表] 課題探究として証明することを実現する指導法開発-領域「数と式」の枠組みの再検討と指導法の開発-2017

    • 著者名/発表者名
      中川裕之,佐々祐之
    • 学会等名
      日本数学教育学会第5回春期研究大会
  • [学会発表] 課題探究として証明することの授業化と指導法の開発-領域「数と式」における第3 学年の授業実践を通して-2017

    • 著者名/発表者名
      佐々祐之,中川裕之
    • 学会等名
      日本科学教育学会年会
  • [学会発表] 類推におけるベース生成のプロセスに関する一考察2017

    • 著者名/発表者名
      中川裕之
    • 学会等名
      日本数学教育学会第50回秋期研究大会
  • [備考] 中川裕之研究室

    • URL

      http://kitchom.ed.oita-u.ac.jp/mathedu-nakagawa/

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公開日: 2018-12-17  

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