最終年度の目標は、一つの単元を通して授業を設計し、実践して生徒の変容を分析することで、想起する能力の高まりをとらえる水準を設定することであった。そのため、これまでに明確にしてきた授業設計の原理に基づいて単元を通した授業を設計、実践し、現場の教員と共に生徒の変容を分析することで知識を想起する能力の水準を設定するといった研究方法を用いた。 具体的に行った研究内容について記述する。第一に、授業設計の原理に基づいて、単元を通した授業を設計するために、単元計画と学習指導案を作成した。第二に、大学の附属中学校において、単元を通した授業を実施した。ここでは、参与観察を行い、ビデオとICレコーダで記録し、板書を写真撮影するとともに、研究代表者と大学院生がフィールドノートに記録をとった。また、特定の子どもを抽出し、定点カメラで行動を追い、学部生がフィールドノートに記録を取った。第三に、収集した授業の記録と生徒のノートから生徒の変容をとらえ、その内容を分析した。そこでは、教師の発問によって行われた活動や思考に注目し、その分析結果から、知識を想起する能力の高まりをとらえる水準を設定した。第四に、そのようにして設定した水準について、授業実践協力者全員と、授業映像を見ながら再分析してその適切性を協議した。 そうしてまとめられた成果の一部を整理し、学会で研究発表を行った。さらに、研究発表での質疑を通して理論や調査結果について再検討を行い、修正したものを学会誌に投稿した。結果、査読によって一部修正したものが採択された。また、自分の研究室のホームページにおいてそれらの研究成果を公開した。
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