研究課題/領域番号 |
17K14045
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
藤原 智也 愛知県立大学, 教育福祉学部, 准教授 (50737822)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ソーシャル・キャピタル / 美術 / 学校教育 / コミュニティデザイン |
研究実績の概要 |
平成29年度は、美術科教育によるアートを通したソーシャル・キャピタル形成の実践の可能性に関して、実践事例の収集と検討、アートのもつ経済や政治に対する批評性について考察した。また、美術が人間の社会性とどのように関わるのか、認知科学の知見をもとに検討し日本美術教育学会にて発表をした。特に、これまで研究代表者がフィールドワークを行ってきた中高の美術教員をパネリストとし、講演にコミュニティデザイナーとして著名な山崎亮氏を招いたシンポジウムを、美術科教育学会の主催という形式で科研費の助成も活用しつつ開催した。 また、学習指導要領が改訂された。学校教育が中央統制的に改革されていくことは、本研究主題に関わるソーシャル・キャピタルが地域に応じて形成されることと相反する懸念がある。このことについて、政治学や社会学における補完性の原理を参照しつつ考察を進めた。 これらの研究実績は、シンポジウムの報告を学会通信(清田哲男・藤原智也「2017年度美術科教育学会リサーチフォーラムin名古屋2017.08.27報告 アートを通した子どもの学びと地域社会との関わり~コミュニティデザインの視点から構想するこれからの美術科教育~」『美術科教育学会通信』)において行った。また、学校教育の地方自治とソーシャル・キャピタルの関係性及び学習指導要領の中央統制の問題について学会の口頭発表を行った(「美術科教育と学習指導要領の政治社会学的検討」第40回美術科教育学会滋賀大会)。後段の内容については、2018年8月に学会誌(査読付き論文)へ投稿を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全国の研究課題に関わる実践事例の調査、そのような事例を検討するための前提をなす現代アートと関連する社会学や政治学に関わる文献調査を進めることができた。また、当該年度に改定された学習指導要領の改訂についても、本研究課題に関わる事項について考察を加えることができた。さらに学会の協力を得て、予定していた本研究課題に関わるシンポジウムを開催することができた。文献調査の成果については、学会にて計画通り口頭発表を行うことができた。これらのことから、本研究はおおむね順調に進展できていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2年目にあたる平成30年度は、文献調査を深めるとともに、フィールドワークによる地域連携を行っている学校美術教育実践の類型化に向けた検討を行うことが課題である。加えて、日本美術教育学会の共同討議にて、本研究課題に関わる議論をする場を設定され、研究代表者が協議会のコーディネーターを任された。この機会に、ソーシャル・キャピタル形成を目的とした地域連携による学校美術教育実践の方法について探索する。また、政治や経済に対する批評性を含んだ現代アートが日本で隆盛しているとは言えない状況について、地域アートに関する研究者との研究会(シンポジウム)の開催を新たに予定している。 1年目の成果を学術論文にまとめて学会へ投稿するとともに、2年目の成果については学会の口頭発表に向けてまとめていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
科研費申請の段階から計画に組み込んでいたシンポジウムの開催について、学会からの助成が得られた。このことで、学会からオーソライズされたかたちで広報ができたとともに、学会経費から若干の助成を得ることができた(会場費、特別講師謝金)。科研費からは、主にパネリストの旅費と各種機材の貸与に充てた。このことが、当初の計画に対して次年度使用額が生じた大きな理由である。 使用計画としては、当初の計画では組み込んでいなかった地域アートの研究者を招いた研究会の開催に充てる予定である。
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